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きらきらの芽1へ
きらきらの芽
「今日のカレーはねー。かなり煮込んだからすごーくおいしくできたと思うの」
私の口に運ばれていく銀のスプーンを凝視してカナは念押しにそう言った。カナの料理をまずいだなんて思ったことはない。むしろ私の口にどんぴしゃなのはカナの料理くらいだ。駅前にあるちょっとこじゃれたお弁当屋さんなんて敷居ばかり高くて自分の口にあったためしがない。
一癖も二癖もある自分の味覚をさらに磨かせているのはカナだけれど、それを満たしてくれるのはもはやカナしかいないとも言える。
「おいしいよ」
銀のスプーンをくわえながら感想のご報告。ちょっとじゃがいもがくずれてるかもしれないけれど、それがなお美味しい。
「なに、俊英さんに?」
水になりかけのさらさらのカレーを掬って、これがまた好きなんだけどなんて思いながら、何気なくカナに話題を振ってみる。
「うん。最近は夜も遅くてちゃんとご飯食べてないんだって」
スプーンをくわえて遠くを見つめる姿なんてもう恋する乙女だ。
「今日、会ったわよ」
にんじんがかりっと音をたてた。なかなかいい歯ごたえだ。
「え、うそ!! どこで?」
「花屋さんで」
俊英さんは、必殺花屋の運び人だ。そういうとカナには怒られるけど。
ご贔屓の花屋さんは帰りのちょっと荷物が多いOLやらベビーカーをお供に連れたお母さん方なんかにすごーく優しい。帰りにちょっと目がついて、そういえば玄関のお花替えようかしら、とか、新しいお花を植えたいわ、なんていう突発的な願望にもお答えするべく、希望の時間にお花を届けてくれるサービスがある。他にも、最近なぜだかお花の元気がないのよね、とか、ちょっとガーデニングとか興味あるけど難しそうだわ、なんてお客さんには花のエキスパートたちが出向いて花の育て方の注意やガーデニングの仕方まで教えてくれる出張サービスなんかがある。
俊英さんはその出張サービス担当の一人なのだ。正確には出張サービス配達担当員だ。まさしく、必殺花屋の運び人。
「きらきらの芽勧められたの」
やっと出てきた豚肉はちれぢれになってルーと絶妙な絡まり具合をみせている。ゴムみたいな噛み応えに惚れ惚れとする。噛み切れなかった豚肉がのどをつるっと滑っていった。
「え? じゃあちゃんと育てなくちゃ!!」
「うさんくさいんじゃなかったっけ?」
ごちそうさまでした。と手を合わせて台所に持っていく。お皿を洗うのは私の役目だ。
「お願いおかーさん! 俊英さんには言わないで」
カナは重ねて持ってきたお茶碗を頭上に掲げた。献上品を取り上げると、スポンジに十分な洗剤を染み込ませる。カナのカレーだとお皿があんまり油っぽくならないのもいい。
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