あの子の突然の演技に思わず驚愕してしまったけど

役者の血がすぐに反応を示した。

あの子に触れることが赦される? 本当に?

いつものように呼吸を整え、役に入る。


「きみを面倒なことに巻き込めない」


「いいえ!! いいえ!! 決してそのようなことはございません!!

先ほども述べたようにこの地位で最大限の力を以って

貴方を救うことがわたくしの使命!!」



あの子主導の下、メルヘンチックな台詞の掛け合いで演技が進む、

やがてあの子が白い手を胸の前で組み大きな目が閉じられた。

どくんどくんと俺の中で鼓動が段々大きくなる。

キスなんて日常茶飯事の中で育ってきて

女の子と初めてのキスでさえこんなに緊張したことは無かった。

おずおずと手を伸ばし小さな肩に手を掛けると

びくりと華奢な身体が跳ね微かな震えが伝わった。

やばい……口元が緩むのが分った。

抱きしめたい衝動を抑え柔らかい唇に触れる。



「……!!」



本当に一瞬、時が止まった気がした。

甘く温かな衝撃が体の中を駆け抜ける。

唇から伝わったあの子の熱が額にくれたキスよりも何倍も熱くって

俺を凍てつかせた罪を浄化していく。

心の中からじんわりと温かさが浸透していく。

この子はすごい……

無敵の力と寛容さに敬服する。

さっき軽く“愛している”なんて言ってしまったけど

本当に愛してしまったのかもしれない。

この俺にそんなことが赦されるのだろうか?

赦された日がきたのだろうか?

自問自答しながら名残惜しげに唇を離して目を開けると

この子への恋を自覚したあの夜―――



…待ってますから―――嘉月に一日も早く逢えるの

―――美月よりも…私が―――



以上に真っ赤になったあの子がいた。

ああ、全くどうしてくれようこの子は……




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