中の人繋がりで服を着よう! その1.呉の幼女と蜀の主君と軍師

cast→土見稟 プリムラ 芙蓉楓 八重桜





 拝啓、お父様お母様。お元気ですか?
 この世にはいないあなた方にお元気ですかと尋ねるのは、少々ナンセンスかもしれませんが、どうかご容赦を。
 俺は元気です。
 最近では騒がしい日々が続いて目が回っていますが、それでも笑って過ごしています。
 報告といたしまして、家族が増えました。
 まだ学生の身空でありながら、そういったことになった経緯を記すとなると、また長くなるので割愛させてもらいますが、神に誓って疾しいことはありません。
 名前はプリムラといいます。魔族の女の子です。少々無口だったときもありましたが、彼女も今では笑顔で毎日を生きてくれています。
 彼女と接する中で、人を育てる難しさを常日頃感じる毎日です。
 わずかな期間ではあれ、俺を個々まで育て上げてくれたお父様、お母様には頭が下がる思いでいっぱいです。



「おにーちゃん! どうどう、これ?」

 うれしそうにプリムラがくるりとその場で一回転。
 可愛いなぁ、と素直に思わせてくれないのは、可愛いその服が原因なわけで。
 トップスは袖が末広がりに長く、白から淡い桃色までグラデーションが利いた洒落た造りだった。
 胸元の大きな赤いリボンもとても良く似合っている。
 が、短い。これで本当にサイズが合っているのかと疑いたくなるほど、裾の丈が短く、胸元までしかカバー仕切れていない。
 ボトムズはプリーツのミニスカートでこちらも上着同様グラデーションが鮮やか。だが、やはり短い。少し動けばインナーがたやすく見えてしまうだろう。
 現に回転したときにライムグリーンが少し見えてしまっていた。
 つまり結論何がいいたいかというと。

「着替えてきなさい」
「えぇ?! なんでぇ!?」

 自信があるのか心底納得できない様子。
 可愛いもので着飾りたい乙女心は重々理解しているが、これはやりすぎだ。

「いいから、着替えてきなさい」
「なんで何でなぁんでぇぇ!」
「あぁぁ暴れるなぁ!」
「まぁ稟くん、リムちゃんとっても似合っているんですから」
「楓……なんでお前もそんな格好なんだ?」
「え……?」

 まず目に付いたのは紺色のとんがり帽。
 その帽子に巻きついた目に優しい若葉色のリボンと同じ色の長い帯を腰元に巻いているのが特徴的だった。
 プリーツスカートはプリムラよりも長いが、やはりかなり膝上。

「ハロウィンはまだかなり先なんだけどな」
「あの、これは……その」

 呆れている俺を怒っていると勘違いしているのか、困ったように視線を彷徨わせている。
 ややあって意を決したよう口元を引き結ぶ。

「似合ってませんか?」

 ……誰もそんなことは言ってない。
 というか問題はそこではないことをいい加減気づくべきだろうに。
 世の中には「似合っているからこそ問題」なことがあることを、この娘さんたちはそろそろ理解するべきなのだ。



「……で、こういうときのストッパーである桜がどうして同じような格好をしているんだ?」
「あ、はははは」

 桜の服装に至っては、どう表現していいやら。
 白を基調としたブラウスはノースリーブでやたらとゴシャゴシャ装飾がなされている。
 肩の先にこれまた白いアームウォーマーが取り付けられ、両手を合わせると羽ばたく翼ができあがるように、袖先に方羽ずつ金の刺繍が描かれている。ノースリーブとアームウォーマーの組み合わせのせいか、露出した肩がかなり強調されるようにも思う。
 頭には一枚の羽を模した髪飾り。臙脂のプリーツスカートは安定の膝上。

「いったい誰の。いやどっちの差し金だ?」
「どっちって……」

 破天荒なのが俺の近辺には多いが、こんなことをする奴は限られる。
 それでも2人いるという時点で、やはり今後の人付き合いを考え直したほうがいいかもしれない。
 考え直した所で、選択が出来るほど味方だっていないのだけど。

「茶髪の変態か、緑のお祭り好きか」
「えぇぇっとぉぉ……」
「亜沙だよ!」
「リムちゃん」
「そっかぁ、亜沙先輩の方かぁ。偉いぞ、プリムラ」

 恐らく楓と桜には口止めをしたようだし、もしかするとプリムラにも口止めをしたのかもしれないが、考えが甘い。
 正直を美徳とする心の清き義妹を存分に撫でながら、片手でテーブルの上のケータイをポケットへ。

「ちょっと出かけてくるわ」

 返事は聞かず、玄関へと大股で歩いていく。一分一秒も惜しい。
 靴を履きながら電話帳を引き出し、ドアを開けながらコールの音を聞く。
 発信先はもちろん、事態の元凶である緑の小悪魔だ。



 天国のお父様、お母様。教育って難しいですね。






*****
プリムラ&楓&桜編。劉備の声って桜だったんだと知ったときの衝撃ったら……
そういえばD.C.のさくらの声も小蓮でしたね。
こっちはもう完璧さくらの独り相撲になりそうだし、ガン無視決定(オイ

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