『Class Room』
出会ったのは、
試験監督に駆り出された受験会場の教室だった。
なんだかやたらと調子の悪そうな受験生がいて。
フラフラと今にも倒れそうな顔色で。
内心、気にしていたら、
案の定、鉛筆を落として・・・
拾ったはずみで隣の机の答案を見てしまったらしく、
慌てている。
決してカンニングではないのは、
ずっと見ていたから分かったけれど。
監督の仕事として声をかけて、
それとなく注意を払って見ていた。
受験当日の体調管理も、
試験の内と言ってしまえばそれだけだけど。
根っから真面目そうな顔に、
訳ありなものを感じた。
この子は受かるんだろうか。
このままの調子じゃ危ういけれど。
せっかくなら、この子が後輩になってもいいかなって。
珍しく、他人に興味を持たない自分がそんなことを考えた。
あの日から・・・ずいぶん遠くまで来たよな。

このページの拍手数:19 / 総拍手数:6941