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雨の弓 レイン×ユミ+コーリ

「技巧」 (6/27 アカンサス)




 空に浮かんだ大きな虹。レインとコーリが作り上げたその虹はきっと、どんなに絵が上手い人間であっても、写しとることはできないだろう。
 きらきら、高い空に輝くその虹を見ながら、ユミはその手に弓矢を作り出す。

「壊すのもったいないなぁ……」
「ふふ、でもユミの練習の為に作り出したものだからね。ほら」

 コーリが指先で指し示すのは、虹の頂点。そこを的に出来るよう、コーリがひときわ輝く光を浮かび上がらせてくれている。
 弓を持つ左手を、まっすぐ前に突き出して。矢をつがえ、ゆっくりと引く。狙いは、コーリが作ってくれた光、一点のみ。
 次の瞬間、放った矢は狙い違わず光を貫き、その一点からさらさらと、虹色の欠片が舞い降りる。
 中央から割れていく、七色の虹。その光の欠片を見つめながら、レインが満足そうに頷いた。

「うん、だいぶ正確になったな」
「コーリさんが光を浮かべてくれたからだよ。なかったらきっと、こんなに綺麗には出来ないと思う」
「でも、始めた頃に比べたら、格段に上手くなってるわよ」

 技術も、タイミングも、呼吸も。訓練を始めた当初は、それはもう酷いもので、技巧専門の教官に、何度直されたことか。
 技術ももちろん必要だけれど、どうやったら一番綺麗に見せられるかも重要だと、よく言われた。

「レインとコーリさんは、すぐに綺麗な虹を作れたって聞いたよ」
「ああ、まぁ確かに」
「単に魔法のタイミングの相性が良かっただけだと思うから、そんな顔しないの、ユミ」
「え……」
「ほっぺた、膨らんでるわよ?」

 つんつん、と人差し指でつつかれた頬。無意識に膨らんでいたそれが、焼きもちのせいだと知って、ユミは慌てて両手で顔を隠した。

「も~、ほらっ」
「きゃあ!?」
「うわっ、何してんだコーリ!」

 どんっ、と強く体を押されて、よろけたところをレインの腕が抱き締めて支えてくれる。

「ユミが私に焼きもちやいてるからレイン、ちゃんと抱き締めてあげなさい?」
「え? 焼きもち? ……へぇ……」
「ち、違うから! 妬いてないから!」

 慌てて否定するけれど、レインは楽しげにユミを抱き締めて離してくれない。

「ふふっ、ユミ可愛い♪」
「コ、コーリさんっ! レイン離して~!」
「離したらその真っ赤な顔、コーリに見られるけど?」
「う……」
「あ、大人しくなった」

 もうしばらく、からかいは続くようである。


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