「はじまりの朝は笑顔で」



ここ数年、仕事上のパートナーとしてほとんど毎日顔を合わせているのに、彼女は化粧した顔しか見せようとしない。
でもさ、普通に考えてみて?
こんな生活してたら相手のあんなトコもこんなトコも、見ないでいられると思う?
野宿した回数もお互いの両手両足じゃ足りないほど。
・・・つか、屋根のある場所で寝られるって最高に幸せなことだったんだと気付いたのも、この仕事に就いたからで。
いや、そんなコトを言いたいんじゃない。
今日は新しい仕事のはじまりの日なんだから、気合いも半端なく入るってもんだ。
ユニフォームも『愛と真実の白』から都会的なチャコールグレーに変わったし。
(まぁ、組織のオリジナルに戻った・・・とも言えるけど。)
任地は世界の政治や経済、金融を統べる場所ときてる!!
ボス直々の命令で、出身がバレないようにと極東の任地で苦楽を共にしてきた奴らとも別れ、俺たち2人と1匹は遠路はるばるやって来たんだ。

「おはようっ!!」と背後からかかるワンフレーズが、『お姫様』の気分を教えてくれる。
今朝は最上級に機嫌がよい・・・と。
付き合い長いんだから、分かって当たり前。
まぁ、分かりやすい性格だしね、彼女は。

すれ違いざま、背中をポンとたたき俺の顔を覗き込んだ彼女の目には、新しい任務への期待とちょっぴりの不安が見えたけど、何より1番俺の心を捉えたのは、そのくちびる。
キレイに塗られた新しいルージュは、彼女のくちびるを彩るためだけに作られたようで。
上機嫌を示す上がった口角。
ほんの少し左より右側の方が上がってる。
コレは、テレてる時の彼女の特徴。
付き合い長いんだからよく分かって・・・って、しつこいよ俺!

気が付けば俺の足はその場に釘付けで、右手はニヤニヤを見られないように口元をおおっていた。
誕生日に贈った時には、色が気に入らないとバッグに直行だったのに・・・
「何してんの?おいて行くよ、コジロウ!!」
彼女の声に、手はそのまま、俺の足はようやく床を蹴った。
今日も彼女の隣にいるために。



「君の3年間を俺にください。」


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ロケット団のムサシ&コジロウSSです。
ポケモンBW(ベストウイッシュ)風味・・・のつもり。

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