ぷかぷか
そらを見あげると、いくつもの白い風船がぷかぷかとういている。わたしがそう言うと、ばかだね、あれはくらげって言うんだよ、なんてきみは言う。
くらげは大きくなったり小さくなったりをくりかえして進む。けれど、なかにはめんどうくさがりやもいて、そんなのは水の流れのままにぷかぷかとたゆたっている。わたしは、そいつを指さして、あれってきみみたい。と言ってみた。きみは、楽なのが好きなんだと笑った。
その日のことを、わたしは今も覚えている。
わたしはいつも全力で生きていたいし、流されるのはきらいだ。でもときどき、夢に見る。ぷかぷかとしあわせの海をただよう。きみとふたりで。
そんな日の夜、わたしは湯船にしずむ。水中ではく息はぷかぷかと白い空へとうかんでいく。それはまるで白い風船みたいで、くらげのようでもある。
だからね、わたしはきみが好きなんだよ。って、言えなくて。ただ今は、水にうかぶあわばかりながめている。