『第1話 イケメン俳優のドマキシマムな秘密のルーツ!?』





 蓮は20歳の誕生日をつい先日無事に終えて後はバレンタインを乗り越えるだけとなっていた。一方事務所はイベントだけでなく、新人発掘オーディションも近づき猫の手も借りたい状況だ。

(わざわざこの時期にオーディションなんて開かなければいいのに)

 お陰でマネージャーの社とも別行動だ。
 そんなことを考えながら蓮には珍しいことにぼんやり歩いていた所為だろう。曲がり角を曲がったところで少女とぶつかり心配しかけたのだが――・・・。

(あれ、この子・・・・・・)

 すぐに思い当たる。最近芸能人にしろと言って直接事務所に乗り込んできた子で、この忙しい時期にタレント部の主任を煩わせるはた迷惑な存在。

 ・・・・・・そんな想いがあったから、これまた蓮には珍しいことに売り言葉買い言葉の応酬に発展し、遂には少女がブチ切れて叫んだ。

「復讐するためよ 不破尚に!!!」

 少女が叫んだ瞬間に禍々しい『何か』が飛び出したことで蓮はハッと息をのんだ。

「文句あr「これは!? ・・・・・・陰の気で歪んでしまっているけど、この魂は――」

 蓮はじーーーっと少女を見つめた。

「な、何よ! 文句あるなら言いなさいよ!!」
「やっぱり・・・・・・ちゃんと魂まで見れば分かるよ。まんまるの綺麗な魂だったのに、こんなに歪んでしまって・・・・・・でも輝きは変わらないから分かるよ、君キョーコちゃんだろ?」
「は? え? 何で名前・・・・・・」

 キョーコをじっと見つめていた目線が外れる。いや、今度はキョーコの頭の少し上辺りを見ている。

「尚・・・・・・松太郎・・・・・・この人って昔キョーコちゃんが言っていたショーちゃん? すごい信じられない暴君だね、自己中だね、人でなしに育ったんだね」
「ええええ!? 当たってるけど、なに!? なんで!? どうして知ってるの!? 何が見えてるの!?」
「こんなに健気なキョーコちゃんを騙して放置するなんて――・・・そうか、そういうことだったのか。何かに呼ばれている気がして日本に渡っけど・・・・・・キョーコちゃんの危機に反応してコーンが呼んでいたんだね」
「なんなの? なんなのよぉぉ」
「安心して、キョーコちゃん。今俺が助けてあげる」

 妖精パワー!! メイクアップ!!

 説明しよう! 敦賀蓮は人間界に巣くう悪しき異形の者と戦うため、秘められた妖精の血を目覚めさせ、伝説の騎士フェアリーナイトに変身するのだ!!

 どこからともなく聞こえてくる第九と共に、(事務所の廊下にも関わらず何故か)天から光の柱が降りてくる。そして蓮がその光に包まれると眩いばかりの七色の洪水が溢れた。そしてそれが少しずつ収まっていくとそこには――・・・

「こ、こーーーん!!!!?」

 説明しよう! フェアリーナイトに変身すると敦賀蓮は久遠ヒズリの姿に戻り、背中から大きな光の羽が生えるのだ!! ちなみにコスチュームは妖精界の超イケてるクールでワンダホーな騎士服だぞ!!

 ここに来てキョーコもようやく彼が誰かを認識し、そしてポロポロと涙を零した。

「大きくなって!! それにこんな立派な羽まで!!」
「また俺のために泣いてくれるんだね。やっぱり君の魂は美しいままだ・・・・・・あとはその魂を歪める悪しき者を浄化するだけだ」

 蓮――いや、フェアリーナイトは聖なる妖精の気で出来た細剣を構えて片手を添える。添えた手からはコーンの石と同じ色の魔方陣が神秘的に輝く。

「なに!? なにをするのコーン!!」
「怖いことじゃないよ、安心して? 俺は君を助けたいだけなんだ」
「助けるっていったいなにから・・・・・・」
「君の魂を歪めるものから・・・・・・。いくよ、顕現せよ!! フェアリーガーデン!!!」

 説明しよう! フェアリーガーデンとはフェアリーナイトの必殺技である!! 聖なる結界へ闇にとらわれたものを閉じこめ強制的に浄化してしまうまさに決め技だ!!

「う、ううう・・・・・・こ、ここは? ここは・・・・・コーンの森? あれ、私、今まで、東京に・・・・・・」

 キョーコがおろおろと辺りを見回すとそこは幼い頃に妖精と出会った森の中だった。

「分からない、分からないけど・・・・・・なんだかとっても穏やかな気分だわ」

 説明しよう!! フェアリーガーデンの中は久遠にとって最も好ましい場所が適用されるのだ!! 想い出の場所なので人間相手にフェアリーガーデンを使ったのは今回が初めてだぞ!! 誰にも想い出の地を穢されたくなかったのだ!!


「ううううん」
「目は覚めた?」

 蓮はパチパチと瞬きして辺りを見回すキョーコの手を取った。結界が解けたそこは既にただの事務所の廊下だ。

「あれ? 私さっきまでコーンの森に」
「あれはレプリカみたいなものだよ。今度2人で本当のあの森に行こうね」
「へ? 敦賀蓮? あれ? コーンは?」
「忘れたの? 俺がコーンだよ? 敦賀蓮は世を忍ぶ仮の姿なんだ」
「ええええ!!!? でも大丈夫なの!? あんなに目立つ変身をしちゃって!?」

 第九が流れ、光が溢れたのをキョーコは確かに見たし聞いた。慌てて辺りを見回すが人影はない。

「あはは、それは大丈夫。カメラにも写らないし、人の記憶にも残らないから」
「え、でも私は・・・・・・」
「君は俺があげた石――・・・コーンを今も大事に持っていてくれているんだろう? あれは俺が妖精の力に目覚めさときに生まれた特別な石でね、持ち主は生み出した妖精との親和性が高くなるんだ。そうすると記憶も消えなくなる」
「そうなんだ・・・・・・・石、大事に持っててよかった。なくしたりしてたら立派になったコーンの姿を忘れちゃうところだったもの」

 キョーコの素直な喜びの言葉に蓮は少し照れて微笑んだ。

「ありがとう。でも本当は誰にも正体を知られてはいけないから、他の人には言わないでね、2人だけの秘密」
「もちろんよ!!」

 人差し指を唇に添える蓮にキョーコは大きく頷いて応える。それをじっと見ていた蓮は僅かに迷いを見せながら声を潜めた。

「それでね、出きればキョーコちゃんにお願いがあるんだけど」
「何でも言って!! よくわからないけど悪しきものから助けてもらったみたいだし! それにコーンが立派に成長していたお祝いよ! 私に出きることなら何でも聞いてあげる!!」

 キョーコの言葉に覚悟を決め蓮は言った。

「うん・・・・・・キョーコちゃんにしかできないことなんだ」
「私にしか?」
「そう、俺の分身であるコーンを大事に持ち続けてくれた君にしか頼めない」



「フェアリーナイトになって俺と一緒に戦ってほしいんだ!!」

 説明しよう!! ここから2人の人間界に巣くう悪しき異形の者との戦いの日々が幕を開けるのだ!!






 その頃・・・・・・

「ぐ、ぐおおおお!!! なんだ、なんだこれは!? 体が、くる、し、い・・・・・・」

 松太郎は体の中をムカデがはい回っているようなおぞましい感覚に身をよじらせた。

「しょ、祥子さん、きゅ、きゅ、しゃ・・・・・・」
「尚? 尚!!」

 説明しよう!! この世の悪しきものたち(今回は怨キョ)は浄化されると天界の審判を受けることになるのだ!! そして勝訴すると原因に天界からの天罰が下されるのだ!!



次回! 激闘、魔界からの使者!! 目覚める高貴なる力!!




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