拍手お礼SS:drunkerd その後で。 |
「燈馬君……そろそろいいんじゃないかな?」 そろそろと、俯きながら視線を上げる。 落ち着かないと言いたげに、可奈は顔を真っ赤にしたまま想の顔を覗き込む。 「何がですか?」 一方の想は特に気にした様子もなく、きょとんとその視線に首を傾げた。 うん、今更だよ、確かにね。 昨日の今日だしさ、でもさ、……やっぱりシラフだと恥ずかしいんだよ、コレ。 ほんの数分前。 言われるまま、可奈は椅子に座った想の膝の上に腰をかけた。 いつものふんわりとした笑顔で「おいで」と言われたら、もう、断る術なんて思いつかない。お姫様抱っこをするように身体を抱え込まれ、ぎゅっと抱き締められると身動きも取れない。物理的にも、心理的にも。 「嫌ですか?」 「嫌じゃないんだけど!こう……なんて言うの?心臓が持たないカンジ……」 嬉しいのも恥ずかしいのも幸せなのも切ない感じなのも照れているのも、全部ごっちゃごちゃな感じで落ち着かない。 それをうまく説明できずに、ただひたすら熱い頬を持て余しながら想の首元に顔を埋めて耐えていると。 「水原さんと次逢えるのって、また来週末くらいになりますよね?」 と、想が背中を撫でながら囁いた。 「あぁ、……仕事終わりが遅過ぎなければ寄れるけど、多分そうかな」 今までだって立ち寄り率は同じようなものだったけれど、これからはもっと気にしないで会いにきてもいいのか。口実なんて無くてもいいんだ。 口に出してからそんなことを考える。 あ、でも。 かえって今までの方が口実がある分話すネタもあったし気まずくならないしよかったのかな。付き合うったって具体的にそういうのをするくらいしか今までと違いがない気もするし。 ぐるぐると思考を廻らせていると、考えていることが解るかのように、想はすぐ横にある無防備に晒された首元をこそりと撫でた。 「時間が開いてしまえば、こうやって僕から触れられる感覚とかを忘れちゃって、もっと気恥ずかしくなると思いませんか?」 今だって充分気恥ずかしいわ!!!! 可奈は言い返せずに心で叫ぶ。 叫びながら背に回した手に思わず力が籠もると、想は撫でていた首筋に唇を落とした。 びくり、と可奈の身体が跳ねる。 「だからこれは練習ですよ。またここに来たときの」 ……それは、毎回ここに来る度に、こういうコトをするってこと?! そりゃ……! それ以上のコトはしたけどそれはホラ、酔った勢いだったからで!! ああでも、そうか、付き合うんだからそういうことか……!!! 可奈がぐるぐる考えている間にも、耳、頬と口づけていく。その都度驚くように身を震わせるのを、想は笑いをこらえながら全身で受け止めていた。 |