「月の戦士」第9章「流転」(4)へ拍手をありがとうございました!





ローズマリー・サトクリフについて


前回にも書いたとおり、とある競作コンテストに出品したファンタジー短編を長編化するにあたり、私が目指していたのは、熱狂的にリスペクトしているローズマリー・サトクリフ氏の小説でした。彼女の小説は児童文学に分類され、図書館でも、氏の著作のほとんどは児童書コーナーにあるのですが、その風景描写の美しさ、人間描写の機微は、おとなの鑑賞にも十分すぎるほど耐えうるものでした。中でも、ローマン・ブリテン四部作と呼ばれるシリーズはすばらしく、そのうちの「ともしびをかかげて」は、1959年のカーネギー賞を受賞しており、また「第九軍団のワシ」は映画化されたことで有名です。

もし、この「月の戦士」を少しでも気に入ってくださる方々は、ぜひぜひサトクリフをお手に取って読んでみていただきたいと思います。拙作よりも百倍はすばらしいですから。



そのうちのふたつだけをご紹介したいと思います。

「辺境のオオカミ」



ローマン・ブリテン四部作の最終話にあたるもので、時代は四世紀。
主人公アレクシオスは、司令官としての判断の誤りによって部隊を失うという大失態を味わって、北ブリテンの辺境守備隊に左遷されてきた。
氏族出身の部下たちの冷ややかな態度にとまどいながらも、次第に彼らの信頼を得ていく。そして、その土地の氏族の族長の息子クーノリクスと知り合い、友情を結ぶ。
けれど、氏族にまったく無理解な上司のために悲劇が生まれ、やがて氏族とローマ軍が敵対し、親友クーノリクスと戦うという運命が彼を待ち受けていた。


……と、あらすじだけ書くと、本当に「月の戦士」の冒頭との共通点がてんこもりですね。もちろん完成度はまるで違いますが……(汗)。私がサトクリフの小説の中で一番好きなのが、この小説です。






「第九軍団のワシ」


新任の百人隊長マーカスは、砦の生活に慣れ始めたころ、信用していたブリトン人の氏族の奇襲を受け、足を負傷して除隊する。
叔父の家で失意の中にいるとき、たまたま見物に行った剣闘試合で、ひとりの剣闘士の命を救うことになる。その剣闘士、ブリトン人のエスカを買い取って自分の従者としたマーカスは、消えてしまった父と第九軍団の軍旗であるワシの行方を求めて、エスカをともなって北の辺境の地への冒険の旅に出る。
映画もレンタルで見ましたが、とても面白かったです。




日本に生まれ育ち、イギリスに一度も行ったことがない私。自然の描写に悩むことが多々あるのですが、そういうときは、ウェブサイトを調べつつ、サトクリフの小説を読み返しています。まさに私にとってブリテンの空気を充電させてくれるのが、サトクリフの小説なのです。

ローマン・ブリテン四部作は、岩波少年文庫に収録されていて、簡単に手に入れることができます。
しかし、サトクリフの小説は、別の出版社からもたくさん出ていて、たとえば、「ケルトとローマの息子」(ちくま文庫)などは、ケルトとローマの混血の少年が奴隷として売られ、過酷な運命の中でまっすぐに生き抜き、やがて幸せを勝ち取るという、とても感動的なストーリーで、おすすめです。







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