osana




(おまけミニ小説1/2)
『竜の都で謳う姫』より  三人の幼少期




 終業のベルが鳴る。ニーノは声を張り上げてウェルナーとアレックスを招集した。そんなことをせずともどうせ一緒に帰るのだが、気分の問題だ。

「ふふーん。見ろ!」

 返されたばかりのテスト用紙を見せびらかす。すべて一つのミスもなく、最良を示すマークが付いていた。

「すごいね、ニーノ! さすがだ!」

「前回も同じ結果だったんじゃないのか? すごいのはすごいんだが」

 女の子のような顔をしたアレックスが手を叩いて褒め称え、なにをやってもいまいち表情の変わらないウェルナーはやっぱり真顔でそんなことをいう。

 猫っ毛をかいて、ニーノはもう一度丁寧に、特にウェルナーに、見せてやった。

「んなもん、まえ最良だったから今回もそうとは限らねえじゃん。毎回取るたびに、スゴイがレベルアップすんだよ。いいか、これは努力のたまものだからな。オレは天才だけど努力家なの」

「尊敬するよ、ニーノ。僕もそんな点数をとってみたい」

「俺は、紙の試験はなんでもいいな」

 キラキラと賞賛の言葉をくれるアレックスも、心底どうでもよさそうなウェルナーも、どちらも本音なのだからおもしろい。しかし、ニーノとしては自慢できればそれで満足だったので、鼻を鳴らしてテストを鞄にしまう。

「アレクは、最良いけそうだけどな」

 いつも良止まりのアレックスにそういうと、彼は困ったような顔をした。

「うん、でも難しいんだ。王は馬鹿と思われてるぐらいがちょうどいいっていわれてるから」

「アレクは馬鹿じゃないだろ」

「馬鹿じゃねえけど、そういうもんなの? オトナって大変だな」

 ちなみにウェルナーの成績自体は「馬鹿」にかかりそうなものだったが、彼自身はまったく気にしていないし、彼が目指すところはそこではないので問題ないのだろう。

 アレックスは、テストの点よりも、将来国を背負う者としての立場を。ニーノは技工師になるべく、とにかく知識を。ウェルナーは竜を狩るのだと、その身体能力を、日々磨いている。

「僕たち、大人になったら、どんなのかな」

 アレックスの言葉には希望ばかりではなく、不安も混ざり込んでいた。ニーノとウェルナーは顔を見合わせる。

「わかんねえけど、変わんねえだろ」

「変わらないでおこうと、いまから決めておけばいいんじゃないか」

 アレックスが笑う。

 つられて二人も笑いだし、三人が肩を寄せ合って、笑った。大人になった自分たちも、きっとこうして笑っているのだろうと、未来を思いながら。

「友達だもんね」

「おうよ」

「あたりまえだ」

 なんの屈託もなく笑う、彼らはそれが永遠であることを、疑いもしなかった。







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イラストはmさまにいただいたものです。








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