ドラマ「陳情令」で藍忘機と魏無羨を演じられた、
王一博さんと肖戦さんをモチーフにした、空想の物語です。
「博君一肖」「BJYX」小説。BL風味。

みつばのBJYX小説第9弾、「我的生日蛋糕」(俺の誕生日ケーキ)です。

(注意)現実に存在する方のお名前が入ってますが、内容は、全くのフィクションです。

そのあたりを受け入れられる方のみ、お読みください。

※中国での名前の呼び方、文化、その他、常識の決まり等がありますが、
二次創作上の都合で、書かせて頂いている部分があります。ご了承ください。



「我的生日蛋糕‐俺の誕生日ケーキ‐」




マンションの玄関の方から扉が閉まる音がした。

…来たな。

肖戦は、口元を綻ばせた。

そして、部屋に入ってくる人の気配を感じながらも、
あえて振り返らず、キッチンの中で作業を続けていた。

「戦哥」

肖戦の後ろに立った人物が名を呼んだ。

「来たぞ」

「わかってる」


肖戦は、そう答えて振り返った。

振り返った先に、会いたかった男がいるはずだった。

だが、肖戦の目には、男の顔では無く、
視界を全部覆うほどの、真っ赤な色が飛び込んできた。

薔薇の花の強い芳香と共に。

驚いて、目を丸くした肖戦の前から
赤い薔薇の花束が下げられ、王一博が顔を出した。

「誕生日おめでとう。戦哥」

祝いの言葉の後、
王一博が、まだ固まったままの肖戦に薔薇の花束を突き出した。

とっさに両腕を出した肖戦は、王一博から大きな花束を受け取ると
あわてて、抱えなおした。

ズシリと重い。

肖戦は、薔薇に関係する仕事のイベントで沢山の花を抱えたことがあった。

そのため、王一博から差し出された薔薇が、おそらく100本あるという察しもついていた。


仕事で見慣れている薔薇だったが、
こうして、贈られる花は、特別な意味を持つ。

とくに、恋人から贈られた赤い薔薇は。


「ありがと」

にっこりと笑った肖戦の顔に、王一博が照れたように視線をそらせた。

「遅くなった詫びもかねた」

ぶっきらぼうな声で、そう言いながらも、
王一博は耳を赤くし、手で首の後ろを撫でていた。

「戦哥が薔薇を扱った仕事をしていたことは知ってる。
でも、今、あげたい花はこれだった」

「うん。嬉しいよ」

肖戦は、薔薇の花束をキッチンカウンターにおくと、
ラッピングを丁寧にはがしていった。


「薔薇は好きだ。それも、こんなに沢山。さっそく飾らせてもらうよ」

ラッピングを取った薔薇の花を、てきぱきとした手つきで、整え、
花瓶に飾っていく肖戦を横目で見ながら、王一博は、つけていたマスクと帽子を外した。

無意識に吐息をついた王一博を、肖戦の方は、顔を上げて一瞥した。

王一博の様子は、ビジネス向けでは無く、リラックスしていた。
だが、その分余計に、蓄積している疲労が、顔に出ているのが見てとれた。

ずっと、表舞台で活躍していた、王一博。

芸能人として、仕事が途切れないほど人気があるという証拠だったが、
ハードなスケジュールの中、体調を崩した時期もあったようだった。

それでも。

ようやく、休暇を取れるようになった今日まで、
休むことなく、ひたすら全速力で駆けてきたかのような日々。

そんな中で、貴重な休息時間を割き、
誕生日を祝う為に、家まで来てくれた王一博に、
肖戦は、言いたい気持ちが沢山あった。


でも、おそらく、王一博は、仕事に関したことで、
肖戦から改めて言われたいことは無いだろう。

労いも。慰めも。励ましも。応援も。

同じ業界にいるからこそ、
肖戦は、最近の王一博が、背負ってきたものを理解していた。

…王一博が、何か話してきたら、その時は、全部、受け止めたい。
だが、今は・・・。


「一博、ソファに座って待っていてくれ。もう料理は出来ている。
薔薇を飾ったら、食事にしよう」

肖戦は、自分の誕生日祝いの料理を手作りしていた。

キッチンに並べられている、豪勢な料理の数々を見て、王一博は「わおっ」と声を上げた。

「全部、戦哥の手作り?」

「ああ」

「戦哥の好物は?戦哥の誕生日祝いなのに、僕の好物が多い」

「俺も好きな料理だ。ほら、辛い料理もある。
でも、そんなに辛くないから王一博も食べられる」

「…戦哥の『辛く無い』は、あてにならない。
火鍋を一緒に食べた時も、そうだった」

「火鍋を食べた時?何かあったか?」

「忘れたのか?
戦哥が辛くないと言った食い物が、僕には凄く辛かった」

「ハハハ。そんなこともあったな」

肖戦は、わざと恨みがましい目つきをして見せている王一博に笑った。

そして、「辛さを調節できるようにしてあるけど、無理するな」と言った。

「口直しにケーキもあるからな」

「ケーキ?」

王一博は、キッチンの奥に置かれているケーキに目を留めた。

白い生クリームが全体に塗られた
直径20センチほどの、円柱のケーキ。

ケーキの上には「29」という数字のローソクが飾られていた。

「あの誕生日ケーキも戦哥の手作り?」

「そうだ。シンプルだけど、中にフルーツを沢山入れた。
一博も好きだろ?」

「ああ、うん…」

頷きながらも、歯切れの悪い王一博に肖戦が不思議そうな顔をした。

「もしかして、ダイエットしてるのか?」

「いや。そういうわけじゃないけど」

王一博は、自分の手荷物から、ケーキボックスを取り出した。

「ドーナツを持ってきた」

肖戦は、王一博が開けたケーキボックスの中のドーナツを見て、目を輝かせた。

「これ、俺が食いたかった店のやつ。わざわざ買ってきてくれたのか?」

「いや。マネージャーに買ってきてもらった」

…それは、分かってる。
もし、王一博がドーナツ屋に現れれば、たとえマスクと帽子をしていても、
正体がばれて大騒ぎになることだろう。

「じゃあ、デザートには、一博の持ってきてくれたドーナツを食べよう」

「僕は、戦哥の作ったケーキがいい」

「わかった」

肖戦が笑った。

「じゃあ、ドーナツは明日の朝、一緒に食べよう」

「うん」

肖戦の提案に王一博は頷くと、再びキッチンカウンターの上のケーキに目をやった。

そして、つかつかとキッチンの中に入ると、
腰をかがめ、生クリームが塗られたケーキに目をこらしていた。

肖戦は、ケーキの近くに、薔薇を飾った花瓶を置いた。

「料理より先にケーキを食べるか?」

肖戦は、王一博がケーキを早く食べたがっているのだと思ったが、
そうでは無かったようだった。

王一博は、ケーキをどこか剣呑な目つきで見下ろしていた。

「・・・このケーキ」

何かいいかけて口を閉じた王一博に、
肖戦は不思議そうに首をかしげた。

「王一博?」

不機嫌な雰囲気になっている王一博に、
ようやく気付いた肖戦が、王一博の方に近寄った。

「このケーキがどうした?一博」

「この前、ネットにあがっていた映像と同じケーキ?」

「ネットにあがっていた映像って?」

「戦哥の誕生日を祝った動画」

「ああ~…。あれか」

肖戦には、王一博が何の動画のことを言っているのか分かった。

「あのケーキと同じじゃないよ」

「じゃあ、あの周囲にいたのは誰だよ?」

「動画を撮ったのは、スタッフの一人だ」

「戦哥の顔に、指で生クリームをつけた奴も?」

「あれは、友達」

「…ふーん」


…面白くない。

そんな顔になっている王一博の心情を読んだ肖戦は、そっと小さなため息をついた。
そして、優しい笑みを浮かべると、王一博の背をぽんぽんと手でたたいた。

「博弟。俺の友人にまで嫉妬するな」

「嫉妬なんて、してない」

「そうか?」

肖戦がクスクスと笑った。

「老王(王さん)、顔に出てるぞ」


そう、からかう肖戦を王一博は、ジトっと睨みつけると、ケーキに手を伸ばした。

そして、その上に指をすべらせ、
すくいあげた生クリームを肖戦の頬に撫でつけた。

「一博」

とっさのことだったが、
肖戦は王一博の暴挙を寛大な態度で受け止めた。

「何するんだよ?」

そう言いながらも、余裕の笑みで見つめている肖戦に、
王一博は、目を細めると、再び、ケーキの生クリームを指ですくった。

そして、今度は肖戦の首と上着に投げつけた。

「おいっ!」

さすがに、唖然となって目を見開いた肖戦は、
生クリームのついた自分の服を見下ろした。

「子どもじゃないんだ。癇癪起こすなよ」

「癇癪じゃない」

王一博は、そう言うと、今度は、肖戦の方に手を伸ばした。

ハッとした肖戦が、気づいた時には、
王一博によって、キッチンの床に押し倒されていた。

勢いよく倒されたわりには、尻もちをついた以外、
肖戦が頭と背をキッチンに打ち付けずにすんだのは、
王一博が回した腕に守られたからだった。

肖戦が、衝撃から我に返るまでの短い間にも
王一博は、次の行動に移っていた。

王一博は、床に座り込んだ肖戦の両足の上にのしかかると、
肖戦を身動きできない体勢にした。

そして、肖戦の首についた生クリームに顔を寄せると、
クリームを舌で舐め取りながら、肖戦の上着のボタンを片手ではずしていった。

身長も、ウエイトも、王一博より肖戦の方があった。

だが、一見細身に見えても、王一博の体は鍛えられた鋼の肉体だった。
硬く、岩のように重い筋力によって、肖戦の体は、やすやすと抑え込まれていた。

…俺も最近は、結構鍛えていたのに。

肖戦は、抵抗をやめ、王一博の足の上に手を降ろした。

力負けする、と諦めたからでは無い。

自分の上着も脱ぎ捨てだした王一博を見た肖戦は、
王一博の行為も、予想したこの後の展開も、素直に受け入れていた。


「嫉妬じゃない」

王一博が、念を押すように言った。

「僕も戦の誕生日を、そばで祝いたかった。だけど…」

その願いが、叶わないことは、分かっていた。

だから…。

「…ずっと。戦と会ったら、こうしたかった」

あの映像で、情欲がわいていたわけじゃないから。

どこまでが本音が分からない、王一博の言い訳に、肖戦が微笑を浮かべた。

「うん…。今は、そばにいる」

肖戦は、そう言って、王一博の腰に手を置くと、己の方に引き寄せた。

「だから、存分に祝ってくれ。
俺も。ずっと、君とこうしたかった」

肖戦の承諾の意を受けた王一博が、肖戦の上着をはだけさせた。

「僕は、このケーキの方を先に喰いたい」

王一博は、そう言って、
生クリームのついた肖戦の頬に手をそえた。

…いいか?

甘え声なのに、
有無を言わさない、強い意志を持った男の顔で肖戦を見つめる王一博。

この世で、誰よりも美しい獣のような男の目。

…彼にこんな瞳で請われて、「いやだ」と言える人間がいるのだろうか?

そう考えながらも、彼がこんな目を向けるのは、
この世で、俺、ただ一人であって欲しい。

それは、自分の誕生日に、肖戦が願ったこととは異なっていた。
だが、肖戦の中で、唯一、自覚している我儘な欲望だった。

「いいよ」

肖戦が言った。

王一博は、すべてを受け入れてくれる、肖戦の美しい笑顔に顔を寄せた。

そして、フッと笑った。


…愛してる。


肖戦と王一博は。

同じ想いを抱えながら、同時に目を閉じると、
自然にひきあった顔に、互いの唇を重ねた。




(end)



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