ドラマ「陳情令」で藍忘機と魏無羨を演じられた、
王一博さんと肖戦さんをモチーフにした、空想の物語です。
「博君一肖」「BJYX」小説。BL風味。

みつばのBJYX小説第7弾、「弟弟生日快楽」(1話)です。

(注意)現実に存在する方のお名前が入ってますが、内容は、全くのフィクションです。

そのあたりを受け入れられる方のみ、お読みください。

※中国での名前の呼び方、文化、その他、常識の決まり等がありますが、
二次創作上の都合で、書かせて頂いている部分があります。ご了承ください。



「弟弟生日快楽」(1話)



王一博は、本日何度目か忘れるほど使用した掃除機を、
部屋の物置収納から再び取り出していた。

マンションの玄関周りから、リビング。キッチン。洗面所にトイレ。

…床に掃除機は何度もかけ、棚の上などの埃はぬぐい、水回りの掃除もした。
とくに普段はあまり使用していないキッチンも丁寧に磨いた。

…すべて念入りに掃除をしたつもりだけど。
でも、うっかり抜けがあるかもしれない。

王一博は、再度、掃除機をかけながら、
洗面所とトイレに設置した新品のタオルを伸ばしたり、
玄関に置いてあるアロマディフューザーの香りを確かめたりした。

王一博にとっては、久しぶりのオフの時間。
今日の夕方から明日は1日中という。
もうどれくらいぶりか分からないほど、完全な休暇日だった。

それなのに、仕事から戻った王一博が、自室の中を一人、
掃除機と雑巾を手に慌ただしく動き回っているのには理由があった。


今夜、王一博の部屋に、肖戦が訪ねてくることになっていた。


同じ業界にいる肖戦も、仕事でずっと多忙な日々を過ごしていたが、
奇跡のようなタイミングで、王一博と同じ日に休みが取れていた。

互いに、テレビ電話以外で顔を合わせることも難しかった二人がようやく会える。

この、突然天からの贈り物のようにふってわいた休日が分かった1週間ほど前。

『王一博、遅くなったけど、君の誕生日を祝いたい。祝いの食事は俺がそっちで作るよ』

肖戦が王一博に、電話でそう言っていた。

「僕の家で?」

『うん。駄目か?』

「いや。かまわない」

…むしろ、嬉しい。

肖戦が手料理を作ってくれるなんて。

王一博は、音声だけの電話で、にやついている顔が肖戦に見られなくて良かったと思った。

「だけど、戦哥。うちのキッチンの調理器具は充実してない」

『オーブンとレンジはあるだろ?あと、包丁とまな板とボウルもあるよな?』

「一応…」

自信無さげな声色の王一博に肖戦が笑った。

『ある程度、料理は下ごしらえしてから行くから大丈夫だ。一博は、何も用意しなくていい。
俺が全部持っていくから、君は俺が行くまで待っていてくれ』

「ああ、わかった」

そう返事しながらも、王一博は、部屋を見渡していた。

さほど散らかしていない部屋でも、来客の目にはどう映るか分からない。
それも、“恋人”に・・・。


…戦にかっこ悪いところを見られたくない。

王一博は、そんな気持ちで、約束の当日、そわそわと落ち着きの無い時間を過ごしていた。

…自室に他人を入れることは初めてじゃ無い。
でも、今だかつて、ここまで真剣に部屋を掃除したことがあっただろうか?

リビングやキッチンはともかく、トレーニングルームにしている部屋と寝室まで掃除し始めた時、王一博は、ふと我に返った。

…戦は、この部屋は入らない。
いや、でも…。もしかしたら・・・。

王一博は、寝室のベッドに目をやった。

迷う前に、王一博は動くと、クローゼットから新しいカバー一式を取り出し、枕と敷布、かけ布団の物をそれぞれ取り替えた。
そして、それまで使用していたカバーやシーツをクルクルと丸めると、クローゼットの奥に押し込んだ。

キッチンに設置した手拭きタオルさえも、肖戦の好みが気になってしまう。

…肖戦は、この柄は嫌いじゃないかな?

王一博は、キッチンのタオルを別のものにしようか悩み始めた。


その時。

部屋のインターフォンの音が鳴り、画面に肖戦の顔がうつった。

時計は、いつの間にか、もう約束の刻になっている。

王一博は、慌てて、手に持っていた掃除機と雑巾を物置収納の中に放り込むと、
バタバタと玄関に走って、ドアのロックを解除した。

王一博がドアを開けると、目の前に、マスク姿の肖戦が立っていた。

Tシャツにチノパン、スニーカーというラフな格好だったが、
その全てが、質もセンスも良いものだった。

たとえ、帽子を目深にかぶっていても、人気絶頂の芸能人オーラは隠しきれていない。

夜の暗がりでも、誰かには気づかれてしまいそうだったが、
幸い、肖戦を取り巻く空気は、持っている大量の荷物によって覆われているように見えた。

肖戦は、背中にリュックを背負い、
手には、キャリーケースとボストンバッグ、さらに買い物袋を持っていた。

王一博がドアを広く開けると、肖戦が素早く部屋の中に入って来た。

玄関のドアが閉まると、肖戦はマスクを取った。
そして、「来たぞ」と言って、王一博ににこやかな笑みを向けた。

王一博は「ようこそ」と言うのも忘れて、肖戦の大量の荷物に目が釘付けになっていた。

「戦哥、この後、どこかに行くのか?」

「いや。この荷物は、全部、仕込み済みの料理や材料」

…こんなに?

もう、肖戦に部屋の中をどう見られているかということは、
全く気にならなくなっていた王一博だった。

リビングに入り、キッチンの前で肖戦が降ろした荷物の中身に王一博は意識を全部持っていかれていた。

「もしかして、調理器具も持参してきた?」

「ああ。少しな。でも、かさばっているのは、クッション材と保冷剤だ。冷蔵庫借りるぞ」

そう言いながら、肖戦は、さっそくバッグを開け、中のものをキッチンカウンターの上に並べだし、王一博が承諾する前に冷蔵庫のドアを開けた。

部屋に入ってきてから、周囲には目もくれず、てきぱきと料理の準備をし始めた肖戦を王一博はただ突っ立って見守っていた。

客人というより、勝手知ったる家政婦か、同居人のような振る舞いをしている肖戦。

自宅なのに、所作無さげに佇んでいる王一博に気づいた肖戦は、「どうした?」と笑って聞いた。

「料理が出来るまで、一博は好きなことをして待ってろ。1時間くらいかかるけど、腹は減ってるか?」

首を横に振った王一博だったが、肖戦は持参していたタッパの1つを台の上に置いた。
そして、キッチンボードから出した器に、タッパの中の総菜を移し替え、そこに箸を添えると、王一博の目の前に差し出した。

「もし、小腹がすいたら、これでもつまんでくれ」

「これも戦哥が作ったのか?」

「うん。そうだ」

王一博は、いろどりの良いラタトゥイユが盛り付けられた器を、感心した眼差しで見つめた。

「シャンパンは後で開けよう。他にも酒を買ってきたけど先に飲むか?」

肖戦は、今度はキャリーケースから、飲み物を取り出し始めた。

…荷物が多いわけだ。

王一博は、自らもキッチンの内側に入った。

「座ってろよ」

そう言う肖戦に王一博は「俺の家」と言って、肖戦の出した飲み物やタッパを冷蔵庫に入れるのを手伝った。

電話では、家で下ごしらえをしておくと言っていた肖戦だったが、下ごしらえどころか、すでに完成された料理も何品かあるようだった。

「戦哥、今日1日中、これらを作ってたのか?」

「いや」

肖戦は、軽い調子で首を振ると、持参していたエプロンを身につけ始めた。

「昨晩、作っておいた物もある。今日は仕事の予定で外にいたから」

…昨晩も料理していたのか。
貴重な休息時間を僕のために・・・。

黙った王一博に肖戦が不思議そうに「どうした?」と声をかけた。

「いや、何かもう、胸がいっぱいで戦哥の料理が食べられないかもしれない」

冗談めかしながらも、本心を口にする王一博に肖戦が、「なんだよ。それ」と言って又笑った。

王一博にとっては、久しぶりに間近で見た肖戦の笑顔だった。

毎日のように、肖戦の動向が写真に撮られ、ネット上にあがっている。
どこに行ったか?何の仕事をしていたか?どんな服装をしていたか?

そんなニュースや情報にあふれた中で、
仕事として肖戦がカメラに向けた笑顔も目にすることが出来た。

しかし、今、目の前にいる肖戦の笑顔は自分だけに向けられている。

王一博は、無意識に肖戦の笑みにつられて顔をほころばせた。

それは、肖戦の目からは、王一博が感じたことと全く同じように見える微笑みだった。


互いを見つめ、微笑み合っているだけで、
満たされた想いが心の中から溢れてくる。

こんなふうに極上の時間を共に過ごせることを、どんなに切望していたか。
それなのに、この慌ただしい再会は、肖戦の照れ隠しなのだろうか?

王一博は、ふと、そんなことを考えた。

王一博の考えが、高確率で当たっていることを証明するように、肖戦の方が先に視線をそらせた。
肖戦の耳朶が両方赤く染まっているのを、王一博は見逃さなかった。

王一博は、ひそかに口角を上げると、キッチンを出てリビングのソファに座った。
そして、キッチンで料理を作る肖戦の様子をしばらくじっと眺めていた。

料理をすることに集中していた肖戦だったが、王一博の熱視線に気づくと顔を上げた。

「どうした?」

「別に。ただ、あんたの顔を見てるだけだ。イケメン過ぎて目が離せない」

「王一博ほどじゃないよ」

「いや。戦哥の色気にはかなわない。最近ますます磨きがかかってる」

「からかうのはよせ。手元が狂う」

肖戦は苦笑しながらも、料理の手を止めなかった。

王一博は、ソファから立ち上がると、キッチンに入り肖戦の横に並んだ。

「手伝う」

「いいよ。一博は休んでいろ。これは君の誕生日祝い料理だから俺が作りたい」

「僕の誕生日祝いなら、したいようにさせてくれ」

王一博が言った。

「僕は戦哥と一緒に料理がしたい」

正確には、戦の近くにいたい。だった。
せっかく、二人きりでいる時間。少しでもそばにいたいと思った王一博だった。

王一博の本心は肖戦に伝わっていた。

「包丁は握るな。」

「撮影でも、何度もやってる」

「あと、絶対、怪我するなよ。一博」

「戦哥、過保護すぎるぞ」

二人きりで並んで立っていても。
甘い空気になるのを、わざと避けているように、
まるでカメラの前にいる時と変わらない、“兄弟”の会話になっていた。

王一博は、だんだん完成していく料理の品々に軽く口笛を吹いた。

「ケーキもある。これも戦哥の手作りか?」

「ああ、スポンジは家で焼いておいた」

「戦哥は器用で多才だ。デザイナーにも、料理人にもなれる」

Wは、綺麗にクリームの飾りつけがされたケーキをまじまじと見つめた。

純粋に感心していたが、どこかで焦りのような感情も生まれているのを感じた王一博だった。

それは負けず嫌いなところから出てくる気持ちだろうか。
それとも、同業者として、同じ男として、憧れと嫉妬のようなものだろうか。

そんな王一博の感情を読んだのか、肖戦は「いずれ、カフェをやりたいと思ってる」と言った。

「戦哥がインタビューで、そんな話をしているのを何かで見たことがある。あれ、本気だったのか?」

「嘘は言わない」

クリームを塗ったケーキの上に、切ったフルーツを慎重に乗せていた肖戦が真面目な顔で言った。

「それって、プロデュースやデザインじゃなく?戦哥がオーナーシェフになるのか?」

「うん。まだ、具体的なことは決まっていないけど、自分の中では構想を膨らませている。
店の外観とか内装とか。料理や飲み物。こんな風な店にしたいって」

「へえ…」

真摯に夢を語る肖戦の横顔を見ながら、王一博は、また不可思議な感情に支配された。

今は、芸能界に身を置いて、演技や歌という芸を磨いている。
常に注目される華やかな世界の中で、肖戦は、それでも自分自身の足元をしっかりと見て人生を歩んでいる。

強烈に惹かれる想いには、6つ年上で、先輩の肖戦に対する憧憬もあった。

それとは別に、どこか置いていかれるような、そんな焦燥を、王一博は又感じた。

肖戦は、無言になって視線をそらせた王一博に目をやると、「まだ先の話だ」と言った。

「沢山の人に俺の料理を食べて欲しいけど、その前に、大切な人を喜ばせたい」

「うん…。戦哥の手料理が食べられる彼女は幸せだな」

そう、ボンヤリと口にした王一博の言葉に肖戦が目を丸くして「“彼女”~?」と問い返してきた。

「・・・・・・」

王一博は黙ったまま、うつむき加減で、サラダ菜を手でちぎっていた。

そんな王一博に肖戦が「王一博」と呼んで意識を向けさせた。

王一博が肖戦の方に顔を向けると、
肖戦が、クリームをつけた桃の欠片を指でつまんで王一博の口元の方に持ってきていた。

肖戦の顔と指先を見比べた後、王一博は、肖戦の指ごと桃を口に含んだ。

そして、クリームと共に肖戦の指先を舐めとった後、王一博は上目遣いで肖戦を見つめた。

「幸せか?」

そう問う肖戦の声が、王一博の耳に、桃のように甘く響いた。

王一博は、わざと唇を引き結んだ顔で、小さく頷いた。

意識してそんな表情をしていないと、
にやけた顔になってしまいそうだったからだった。

そんな王一博に、肖戦はクリームのように蕩けそうな笑顔を向けた。





(To be continued)


このページの拍手数:6 / 総拍手数:268077

コメントを送る

※コメントに入力できる文字数は全角で最大1000文字です

※このコメントはサイト管理人のみ閲覧できます