ドラマ「陳情令」で藍忘機と魏無羨を演じられた、
王一博さんと肖戦さんをモチーフにした、空想の物語です。
「博君一肖」「BJYX」小説。BL風味。

みつばのBJYX小説第6弾、「俺の彦星-My Altair-(side肖戦)」
です。


(注意)現実に存在する方のお名前が入ってますが、内容は、全くのフィクションです。

そのあたりを受け入れられる方のみ、お読みください。

※中国での名前の呼び方、文化、その他、常識の決まり等がありますが、
二次創作上の都合で、書かせて頂いている部分があります。ご了承ください。



「俺の彦星-My Altair-(side肖戦)」




・・・今夜の星は見えないかもしれない。


肖戦は、マンションの自宅窓から曇り空を眺め、ボンヤリとそんなことを思った。

今日は、七夕。

もし、星が出ていたとしても、そばで一緒に見たい人と会うことは出来ない。

それが分かっていた肖戦は、それでも、今夜は晴れてくれたらいいのに。と願った。

会いたい人に会えないなら、せめて、夜空の恋人達が逢瀬出来たという幸せに自分もあやかりたい。そんな思いがあった。

仕事が忙しくなってきた肖戦のスケジュールは今日も1日中埋まっていた。

それは、良いことではあったが、プライベートで持てる時間が、ここ最近は、ほぼ皆無となっていた。


肖戦は、まもなくマンションまで迎えに来るマネージャーとの約束の時間を気にしながら、出かける準備を始めた。

服を着替え終えた肖戦は、寝室に入り、ベッドのサイドボードの上に置いていたジュエリーボックスを開けた。

その中に、入っていた指輪を、肖戦は左手の中指にはめた。

しかし、指輪は指の周囲でクルクルと周り、
肖戦が歩き出せば、地面に落ちてしまいそうなほど緩かった。

薬指にも人差し指にも緩い。小指などもっての他だったが、親指にするには窮屈だった。

…やはり、まだちょうどにはなってないか。


『だって、僕の知ってる戦哥のサイズはこれだった』

肖戦の脳裏に、これをくれた人物の、その時の不貞腐れたような声と場面が浮かんでいた。
肖戦は、はめた指輪をはずしながら、苦笑を浮かべた。



―――あの夜は、よく晴れていた。

肖戦は、王一博から電話があった日のことから思い出していた。


『戦哥、今週は流星群が見られるらしい』

「ほんとか?王一博」

『うん。ネットニュースで見た。スタッフの誰かもそんな事を言ってるのを聞いた』

電話の向こう側で、王一博のやや眠そうな声が聴こえた。

その夜、マンションの自室にいた肖戦の電話に王一博からかかってきた電話。

もう夜も遅い時間だったが、王一博は、先ほど家に帰ってきたようだった。
朝から夜まで。ともすれば、数日、ほとんど眠る時間も無いほど、仕事がある王一博のことを、肖戦も知っていた。

王一博の芸能界での仕事はますます多忙になっている。

街中のあちらこちらの看板や広告で王一博の姿を見かけた。
ネットでも毎日のように王一博のドラマ撮影現場の写真や、収録現場の画像があがっている。

それでも、短く貴重な休息時間を使って、自分に連絡をくれる。

肖戦は、そんな王一博の行動を、とても嬉しく感じると共に、王一博の体の心配をした。

しかし、あえて、そんなことを口にするまいと決めていた肖戦だったが、王一博の次の言葉で考えを変えるかどうか迷うことになった。

王一博が「戦哥、明日の夜、一緒にドライブして流星群を見に行こう」と続けていた。

「・・・冗談か?」

思わず耳を疑った肖戦だったが、電話の向こうの王一博は「本気だよ」と、ムスっとした声色で返してきた。

おそらく、睡魔のせいもあるだろうが、肖戦の反応が、想像していたものと違っていたことに王一博が、機嫌を損ねているようだった。

「僕の明日の仕事は、夕方であがって、翌日もそんなに早くない。だから、行くなら明日だ」

肖戦には、王一博の言う、そんなに早くない。の、比較対象時刻が分からなかった。

だが、無茶に近い誘いをしていることは分かった。

「待て。一博。君が今、僕のいる場所からそんなに遠くないところにいることは知ってるが、
ドライブなんて、一体どこに行くつもりなんだ?」

「少し遠い。でも、星を見るには穴場だってところを知っている」

「車は?」

「僕のじゃ足がつくからレンタカーを借りる」

“足がつく”とは、まるで、逃亡者のような言い草だったが、
王一博が所有している車は、もう周知されており、移動するには、確かに目立つだろう。

「君が運転するのか?」

「当然」

「いや、でも・・・」

王一博の事のことを慮り、言いあぐねている肖戦に、王一博が焦れた声をあげた。

「戦哥、僕とドライブに行くのが嫌なのか?」

「そうじゃない。そうじゃないが…君が、せっかくまとめて休息出来る時間なのに、こんな事で使わせるなんて」

「こんなこと?」

王一博が不機嫌さを丸出しにした声をあげた。

「僕は、やりたい事をしたいだけだ。僕の時間は、その為にある。仕事以外の時間をどう使おうが僕の自由だ。」

「…そうだな」

王一博の言葉は、最もだった。

「僕は、あんたと一緒に流星群を見たいだけだ。戦哥は?」

「うん。俺も行きたい。明日の夕方からは俺も空いてる」

「じゃあ、決まりだ」

肖戦の気持ちが変わらないうちに、というように、王一博が早口で答えた。

「明日、迎えに来る前に電話する」

「わかった」

「じゃ、また明日。おやすみ、戦哥」

「おやすみ。一博」

余韻を残す間もなく、電話は切れた。

肖戦は、電話を切って、すぐに入眠しているだろう王一博を想像した。

それから、部屋のクローゼットの扉をあけ、その中に仕舞っていたジュエリーボックスを取り出した。

ジュエリーボックスの中には、ブランドもののジュエリーショップで、肖戦が王一博にプレゼントしたいと、ひそかに注文し、届けてもらったアクセサリーが入っていた。

本当は、今年の七夕節の時に王一博に渡したいと考えていた肖戦。

だが、その時期、二人が確実に会えるという保障はない。
王一博も肖戦も、舞い込んでくる仕事の内容次第、その日、どこにいるかも分からなかった。

肖戦は、会う約束をした明日の夜に、王一博に渡すことを決め、ジュエリーボックスを、リュックの中に忍ばせた。


そして、翌日。


肖戦は夜9時近くになってかかってきた王一博の電話でマンションの裏路地に立った。
肖戦が指定場所に立って数十秒で、王一博の乗ったレンタカーが道路わきに滑り込んできた。

そして、肖戦を乗せた王一博のレンタカーは、あっという間にその場から出発した。

王一博は、バケット型の帽子に、眼鏡。マスクという出で立ちで車の運転をしていた。
肖戦もほとんど同じような姿で助手席に座っていた。

「順調にいけば、ここから1時間くらいの場所だ」

マスク姿の王一博の表情はあまり見えなかったが、やはり疲労がにじみ出ているような声色だった。

「運転をかわろうか?」

王一博の体調を気にしながらも、悟られないように提案した肖戦の気遣いだったが、王一博がきっぱりと断った。

「自転車もうまく乗れない戦哥に車の運転はさせられない」

「いつの話だよ。もう乗れる」

「戦哥は、運転の心配はしなくていい。天気が崩れないように祈ってて。
流れ星が見られるように」

王一博の言葉に、肖戦は、車中から流れる景色をチラリと見やった。
道路は、まだ、街のビル群の中。
ネオンのせいか夜空の星の光も、判別出来ない夜空だった。

「なあ、一博。あれから考えたんだけど」

肖戦が、フロントガラスの上の方を覗き見しながら言った。

「流れ星を見るのに、わざわざ、展望の良いところにドライブに行く必要があったのか?人気のない近場もあるだろ?」

「べつに、流星群は口実でも無いけど、一番の目的は戦哥をドライブに連れて行くことだった」

「ん?どうして?」

「戦哥、前に拗ねただろ?一緒にドライブに行けなかったって」

「いつの話だ?」

本気できょとんとしている肖戦に「僕たちが共演したドラマ撮影の時」と王一博が淡々と応えた。

「戦哥は撮影があった日、僕が他の共演者と一緒にドライブに行った」

・・・ああ、あの時。

肖戦は、思い出して、気まずそうに、運転席とは反対側の車窓に顔を向けた。

「別に、俺は拗ねていなかった」

「いや。拗ねた顔をしてた。あの後、しばらくドライブという言葉が戦哥の前で禁句になったくらい」

「それは…、しょうがないだろ。あの時期、俺は、他のドラマの撮影も続いていて、ドライブとかそういう事が出来なかったから、たぶん、羨ましく思ったんだよ」

「そう?嫉妬していたんじゃなくて?」

「あ?」

わざとらしく、半目で聞き返す肖戦に、王一博がニヤッと笑った気配がした。
マスク姿で、それは見えなかったが、確かに、今笑った、と肖戦は感じた。

肖戦も、つられたように、口元を綻ばせた。


こうして、会えるのも久しぶりだった。

そして、こんな風に二人きりでドライブに行くのは初めてだった。

流れ星を見たことはあったが、誰かと、二人きりで流星群を見るのも、これが初めての経験になるだろう。
演じるドラマの中で、そういうシーンがあっても不思議では無かったが、これを今現実でしようとしている。

今夜は、流星群が見える日だと王一博が言っていたが、肖戦もあの電話の後、ネットで調べていた。
たしかに、今夜は流星群が見えやすい夜と書いてある記事がネット上にあがっている。

だが、そんなに簡単に流れ星が見られるだろうか。

流星群が一番見られるピークは、夜中から明け方の時間らしかった。

明日も仕事のスケジュールが埋まっているような王一博をそんな時間まで運転させるわけにはいかない。

そんな思いで、運転席の王一博を見つめていた肖戦の視線に王一博が気づいた。

「なに?」

「あ、いや。髪切ったんだな」

「ああ」

王一博の相槌は端的だった。

別に不機嫌というわけでは無さそうだったが、運転に集中しているのだろう。

「これから暑い季節だからちょうどいいよな。俺も切ろうかな」

そう言って、前髪を指で挟んで上目遣いで見た肖戦を、王一博が横目で一瞥した。

「ドラマで坊主の役でもするのか?」

「役とは関係ない。そろそろイメチェンもいいだろ」

「戦哥が短髪になったら、ますます童顔になる」

「いいだろ。童顔」

「うらやましくない」

王一博が淡々と言った。

「僕は、年を取るごとに大人の色気を持ちたい」

「へえ…」

感心したように、隣から見つめる肖戦の視線に気づいた王一博が、気恥ずかしさを隠すように、ぶっきらぼうに言った。

「年相応に、身につけたいものがある。…身長はこれ以上伸びなくても」


…身長?

肖戦が首をかしげた。

「もしかして。一博。身長にこだわってるのか?十分だろ」

「戦哥より高くない」

「そうだけど、何も俺と比較しなくてもいいんじゃないか?」

そう聞く肖戦に王一博が黙った。

「王一博?」

「背が高めの方がいいって…戦哥が、言ってた」

ややあって、ぼそっと小さく呟くように言った王一博の声に肖戦は、「は?」と怪訝そうに耳をそばだてた。

「何の話だ?」

「戦哥の好みのタイプは、背が高めの人だって」

「俺、そんなこと言った事あったか?」

「僕には言ってないけど、何かのインタビュー記事で見た」

「…一博。それ、ネットにあがっていた記事じゃないか?すらっとした感じ、とかは、いつか言ったかもしれないけど」

…背が高めなんて、言った記憶が無い。

呆れたように肖戦が苦笑を浮かべた。

「でも、戦哥は、背の高い奴とすぐに仲良くなってる」

「そうか?接し方を背丈で変えてない。それに、ドラマの共演者だったら背の高い役者がいっぱいいるだろ?」

そう言った後、妙につっかかってくるような王一博に肖戦は、何かを悟った。

「もしかして…、一博、俺が共演者と一緒に食事に行ったりしたネット記事でも見たか?」

「・・・・・・」

無言の王一博に肖戦が自分の考えが当たった事を確信した。

「そういうこともある。プライベートでは行ってない」

肖戦が優しい口調で言った。

「ヤキモチをやくなよ」

「やいてない」

速攻で否定してきた王一博の口ぶりは拗ねていた。

肖戦は、王一博の素振りを可愛いと思う反面、手のかかる弟分…いや、恋人だと思った。

「なあ、一博。俺たち、仕事から離れても、ほとんどカメラに追いかけられる生活をしている。でも、ネット情報には踊らされるなよ?少なくとも、互いのことに関しては。今、君のそばにいて話をしているのが、本当の俺だから。それ、分かってくれるよな?」

「うん…。僕もそうだ」

王一博が小さな声で言った。

「なら、いい」

肖戦が微笑んだ。

本当は、今すぐ手を伸ばして、王一博の手を握りたいと思った肖戦だった。

だが、車を運転中の王一博にそんな事は出来ない。

肖戦は、車が目的地に停まったら、そうしようと考えた。

…並んで、手をつないで星空を眺めよう。

きっと、王一博も同じことを考えてくれている。

そんな気持ちで肖戦は、緩む頬を前に向けた。

こうして、ときめくような時間を思い描いていた肖戦だったが、未来の現実は、そう甘くは無かった。


―――1時間後。

目的地の駐車場についた時、肖戦は、呆然とした面持ちで隣の王一博に尋ねた。

「これは・・・一体どういうことだ?一博」

肖戦がそういう状態になるのも無理は無かった。

王一博が“穴場”だと言っていた、高台は、昼間の公園くらい人がいた。

…いくら、夜間で、マスクと帽子をかぶっていても、こんなところを二人一緒に出ていったら、誰かには正体を気づかれてしまうかもしれない。

肖戦は、そんな気持ちで、王一博の顔色を伺った。




(「僕の彦星-My Altair-(side王一博)-前編-」に続く)




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