エコロジー・リレイション (???+アルフレッド×イヴァン)







アルフレッドは急いでいた。
「しまった…うっかり寝過ごしたんだぞ」
それでも書類は何とか揃え、会場へ着くことができた。
既に他のメンバーは集まっているに違いない。またどんな言葉で笑われるか。
とりあえず急ごう、と足を速めるアメリカを立ち止らせたものは。





「…やめてぇぇぇぇ…!!」


「?」


何だか聞き覚えのある声だな、と思わず足を止める。
それは、目の前の部屋…何故か扉のドアノブが壊され、ばっきりと抉り取られていた。
(ドアノブが…全く、公共の場で)
仕方なしに捨てられたように落ちていたドアノブを拾う。すると、再び先程の声が聞えてきた。



「やだよ、お願い止めてってば!」


「何を言うのですか、拒む必要などどこにあるというのですか」


「どこにっていうか、全体的にとにかくあるよ!……やっ、ほんとに止め…!」




何か言い争いをしているようだ。
声からして二人の男だ。片方はあまり聞いたことのない声だが、もう片方はよく聞く声だった気がする。
(誰だっけな…)


ドアノブがばっきりと壊されていた為に、部屋のドアは僅かに浮いていた。
そこからアルフレッドはそっと中の様子を覗くことにする。





「さあ、兄さん、ここなら誰もいません。今こそ一つになりましょう兄さん」
「何度言えば分かるの…!僕、これから別の部屋で、会議が……」


もはや涙声になりかけている声はイヴァンだった。だが。
(…兄さん?確かイヴァンには弟は居なかったよな…)
アルフレッドの記憶では、彼には妹が居た筈だ。長い髪をしていて、濃いブルーのワンピースを着ている少女。
しかし、今イヴァンの目の前に立つ人物は彼を「兄さん」とは呼んでいるが、髪は色こそ同じでも短髪。
服装もどうみても男性のもので、身長も女性にしては高い。


「会議など、休めばいいではないですか。それよりも兄さん、」
「や、ぁ、だめ、だって………」
イヴァンはその男に首に巻いていたマフラーを引っ張られ、首筋に噛みつかれてしまう。
イヴァンは必死に逃げようとするが、どうやら首が弱いのかふるふると震えるばかりで逃げ出せずにいる。


(あのイヴァンが…ピンチだなんて)


アルフレッドは少なからず驚いていた。あのイヴァンが。
普段の彼ならば容赦なく水道管を取り出して一発、殴りつけて悠々と去るに違いないというのに。
彼の抵抗が弱まっていくのを良いことに、男の手は彼の服を脱がしていく。


「兄さん……」
あんな得体の知れない男に、いいようにされているだなんて。


「やだ、よ……痛い、よぅ……っ」
思わずぽろりと零れた彼の涙。
それを目にした瞬間、アルフレッドは動いていた。





バタン!!


「!?」
「Hey!弱い者いじめは止めるんだぞ!!」
「………ッ」
「何だ、貴様は。俺と兄さんの邪魔をする気か」
「邪魔をしてるのは君だぞ。イヴァンはこれから俺達と会議だからね!」
「煩い。どうせいつもロクな結果すら出せない癖に」
その男は、明らかに鋭い目つきでアルフレッドを敵視している。
しかも、その手にはナイフが握られていた。



「………アルフレッド、くん……」
「イヴァンは俺が連れていくぞ。いい加減行かないと待たせてる奴らが居るからね」
「俺が許すと思うのか。俺の、俺だけの兄さんを……!」
「いいんだぞ、俺から直接このことをイヴァンの上司に報告しても」
「!」
アメリカは早々にこの揉め事を切り上げる為に、切り札を出した。
「俺の上司はイヴァンの上司とも結構話が通じるんだ、それでもいいのかい?」
「………ちッ」
男は吐き捨てるように顔を逸らし、再びイヴァンの方へ振り向いた。
「……ナタ…」
「…兄さん、すみません。ここは一度引きます。ですが、俺はまだ諦めたわけではありませんから」
先程の威嚇丸出しの声とは裏腹に、優しい声で言う。
そしてそっと額に唇を寄せ、彼にキスを落とすと、もうアルフレッドの方へは顔も向けずにさっさと部屋から立ち去って行った。
後には、力なく壁に凭れ掛ったイヴァンと、彼を見下ろすアルフレッドが残される。







「………」
「……えっと…」
「……ありがとう」
「え。あー…う、うん」
イヴァンは微かに顔を赤らめ、アルフレッドにお礼を言ったのだ。
驚いて凝視するが、当のイヴァンは先程あの男に襲われ掛けていた為に、服もマフラーも乱れてしまっていた。
アルフレッドはそのことにも戸惑い、上手く答えが返せなかった。
「と、とりあえず立てるかい?」
手を伸ばすと、弱弱しくはあったが握ってくる手があった。


「よっ…と。さっきの彼、何者だい?君、妹だけじゃなくて弟も居たのかい?」
しかも、妹と同じようにクレイジーな。
そう聞くと、イヴァンははあ、と溜息を付きながら
「…ナターリヤだよ」
「え、でも…」
「なんかね、僕と一つになる為だけに男になったみたいなんだよね」
「……どういうことだい」
「多分、どっかの眉毛の誰かさんに頼んだんじゃない?もしくは脅したのか…分からないけどね」
「……はぁ」
イヴァンは疲れたように、マフラーに手を掛ける。首筋の噛み痕――そして、赤い独占の印。
「…」
「なに?」
「……そうだ、これ。そのままじゃヒリヒリするだろ?」
アメリカはポケットにたまたま絆創膏があったのを思い出し、イヴァンに差し出した。
「いいの?」
「いいよ、俺はヒーローだからね」
「ふふ、ありがとう。…悪いんだけど、首のとこにそれ、張ってくれる?」
「あ、ああ」
マフラーを引き、アルフレッドの前に惜しげもなく晒される首。
思っていたよりもずっと白く、滑らかな肌に、その赤はとても目立った。
「………」


「よ、よし。これでオッケーなんだぞ」
「ごめんね、いろいろ迷惑掛けちゃって…」
「礼には及ばないんだぞ!」
「ふふ、君が来てくれて良かった。…ありがと、アルくん」
「!」



微かにふわりと微笑まれた、その表情ときたら。


(…何なんだろう、これ……)
酷く子供のように素直に笑うイヴァンの姿は、アルフレッドにはとても新鮮で。
それで、しかも、アルフレッドの胸の鼓動は、異常なほど速まっていて。







(ああ、この気持ちは、)







俺は、もしかしたら、






























End

































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