雪菜×早苗

いつの季節も、何故アイスは早足に溶けていくのか。
こんなに夜は冷たい色なのに。

雪菜と過ごした日曜日も残り僅か。
週末くらいしか会えないものの、今日の出来事はどれも他愛無い。
あちこち歩いたり、買い物したり。
それでも一緒に居るだけで同性は気が合うので楽。

山から街に遊びに来れば、片道だけでも車で30分。
ファミレスに寄ったのは小腹が空いた為、だけじゃない。
まだ何となく離れ難くて早苗の我が侭。

困ってなければ良いけれど。
普段、我慢ばかり多いので欲求を口にするとつい気弱になる。

軽食の皿も、会話の合間つまんでいるうちに空。
今度こそ最後の注文に決めたのはアイス。

抹茶の香りで満たされていた早苗の唇に、褐色が触れた。
雪菜から差し出された一匙。
折角二人居るのだ、お互い違うフレーバーで半分交換。

「口、開けないの?」

素直に顎を緩めると、チョコレートの冷気できゅっと締まる。
後引く苦味も決して長くない。
共に溶け合えば、最後に残るのは甘い名残。

まだ、もう少し、此処に居たい。

*約30の嘘 或る二人「甘くて冷たくて居心地が良すぎて」

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