2018bd_day26.jpg
拍手 ありがとうございます!




本日の甲斐山亨④
écrit par Sei








どうも。
甲斐山です。
あ、気軽に『カイ』とお呼びください。

類様からの申しつけで、牧野様の護衛をしております。
これまでは学校への通学とアルバイト先への移動、ご友人とのお出掛けをこっそりと見届け、類様へと報告して参りました。
この程度のことなら朝飯前、だったのですが。

先日、西門様に連れられて行ったアルバイト先からとんぼ返りされた数日後。
今日は松岡様とご歓談の様子。
正直、この甲斐山…松岡様に心を奪われてしまいました。
美魔女な三条様や豪胆な大河原様にはない、可憐さを松岡様はお持ちなのですよ!
あのふんわりとウェーブした、柔らかなお髪。
クルッとした、円らで大きな瞳。
声こそは聞こえませんが、きっと鈴を転がすようなお声をしてらっしゃるのでしょう。
そんな声で『亨さん』なんて呼ばれたら…あぁぁぁぁぁ!!

コホン。
失礼…取り乱しました。

とにかく。
牧野様も松岡様も可愛らしくて、お二人が微笑んでいらっしゃるのを見て、私も知らずと笑みが零れます。


そして、数刻。
お二人が連れ立って移動された先を、私は愕然とした思いで見つめております。
男であれば一度くらいはお邪魔してみたいと思うであろう『メイドカフェ』。
花沢家にお仕えする身にありながら、一度でいい…『ご主人様』と呼ばれてみたい。
それに何と、松岡様はここでアルバイトをされているご様子。
松岡様にそんな風に呼ばれてしまったら…あぁ、心臓がいくつあっても足りない!

み、見たい…っ!
いや、でも今は勤務中…。
牧野様の護衛…そして、それを類様へと報告せねば。
けど…見たいっ!

バックヤードから漏れ聞こえた声で、牧野様は今日限りのアルバイトを受諾された模様。
ならば、問題ない。
牧野様をお傍で護衛でき、料金は必要経費として計上できる。
そのうえ、松岡様のメイド姿も拝める。
一石三鳥ではないかっ!

男、甲斐山。
決断すれば行動は素早いと自負しております。

いざっ!夢の空間へGO!!


その扉を開けると。

『おかえりなさいませ♪ご主人様♡』

見目麗しい笑顔で出迎えてくださったのは、私の天使!
胸元のネームプレートには平仮名で『ゆうき♡』と書かれている。
通り名ではなく、実の名で仕事をされていることで好感度が更に倍!
だが、純粋で曲がったことを嫌う牧野様のご親友ならば当然か。
「今日はポカポカ陽気で、お散歩日和ですね♪」
私の隣で膝立ちの姿勢から見上げてくる視線に、鼓動が逸る。
「あ、あぁ…そうだね。」
ドギマギする胸で言葉が震えないよう、努めて冷静に返した、つもりだが。
クスッと笑った天使が、その瞳で『お仕事、お疲れさまです♡』と、私に束の間の安らぎを与えてくれる。

だが、私のターゲットは『牧野様』だ。
天使の背中を見送りながら店内を見回す、と。
着慣れないメイド服に戸惑いながらも笑顔を向ける姿がそこにあった。
うむ、あれはあれで可愛いな。
私の天使には敵わないが、まぁ悪くはない。

しかし、これを類様へと報告してよいものか。
こんな牧野様のお姿を見たら、類様は発狂されるのでは。
あぁ、でも見せて差し上げたい。
私の心の葛藤を見透かすように、ツツッと牧野様が私の元へとやってくる。
その笑顔はまるで向日葵のよう。
一瞬見惚れた私に、愛しい声が向けられる。
「ご主人様。お写真をご所望ですか?」
え?誰が?誰と?
私と牧野様を微笑まし気に見つめる、私の天使。
違うっ!そうじゃない!
と、思うのに。
「えっ、っと…オーダーすればいい、のかな?」
そして、その画面には満面の笑みを浮かべる牧野様と、ぎこちなく笑う私。
これを送っていいのか、迷う私に。
「二人のステキな思い出ができましたね♪」
と微笑んだのは、私の天使の親友だった。


迷った挙句に、恐る恐る送信ボタンをタップする。
と、その直後、私のスマホから恐怖の着メロが流れた。
あぁ、そうでしょう、そうでしょう。
褒められるなんて微塵も思ってません。
が、これが今日の牧野様のアルバイト姿なのです。
類様、現実から目を逸らしてはいけませんよ…。





このページの拍手数:727 / 総拍手数:53633