2021ruibd_01.jpg
拍手 ありがとうございます!




~僕の話をするね~
écrit par plumeria










僕の名前は道明寺 楓維。
ロサンゼルスに住んでて5歳になったばかり。
 
パパはブライアン・アンダーソン。ホテル経営者でイケメンだし、ママは道明寺 椿って言うんだけどホントに美人なんだ。
ただ、少し怖いけどね。でもグランマに比べたら優しいかな?
 
 
そんな僕は周りからも「パパみたいな髪でいいねぇ」とか「ママそっくりの顔だね」とか言われてる。
つまり、「格好イイ」ってこと♪
悪いけどそこら辺にいる5歳児とは一緒にして欲しくないな。
しかも「可愛い」なんてごめんだよ、そんな言葉ならいらないし。
 
今は道明寺が経営してるキンダーガーデンに通ってるけど、その前から専属の家庭教師がついてるから日本語とドイツ語を勉強中なんだ。
面倒だよね……来年からはフランス語も始めるってママが言ってたけど。
それにもうプレゼンテーション能力を高めていくことが大切だって言うからそんな授業も受けてるよ。
 
まぁ、司おじ様のようになるなって言うのがママの意見。
「度胸だけじゃだめなの!知性は重要よ!」…どうやらあの人は相当な○○だったんだね。
 
 
 
「……なんか面白い事はないかな。毎日同じ事のくり返しでつまんないや」
 
ホルムビーヒルズにある自宅の2階バルコニーから外を眺めてると「楓維~」と僕を呼ぶ声が聞こえてきた。
 
はぁ……またママが何かさせる気だな?
今度はケンドーとか言う棒を振りまわすものじゃないよね?毎週くるジュードーのコーチ、怖いから嫌なんだよ……。
ホント、はやく弟か妹を産んでくれないかなぁ……僕にばっかり夢中になるから困るんだよね。
 
 
「どうかしたの?ママ」
「あぁ、そんな所にいたの?何をしていたの?」
 
「…今日は天気がいいから日向ぼっこだよ」
 
 
吹き抜けの手摺りから身を乗り出して1階を見下ろすと、天井のドームから太陽の光が入って来て、ママの綺麗な黒髪を照らしてる。
僕の大好きなママの髪……僕が茶色い髪だからうらやましい。
僕、絶対にガールフレンドは黒髪にするんだ♪
 
 
「もう少ししたら司が来るわ。こっちに仕事で来たからあなたに会いたいんだって」
「……え?司おじ様が僕に?」
 
「子供なんて好きじゃないクセに楓維は特別なんでしょうね。だからリビングにいらっしゃい」
「……はーい」
 
 
うわ……コーチよりも面倒くさいかも!
だっておしゃべり上手でもないし、意味不明な事言うし、僕が話すことでさえたまに???ってなって固まるんだよ?
今までだって僕が「そんなことも知らないの?」って何度言ったか!
お仕事は出来るんだろうけど、あれじゃあ結婚出来ないのもわかる気がする。
 
……きっと僕の方が早いんじゃないかな?
くすっ、そんな事言ったら怒るだろうから言わないけど。
 
 
 
ママが僕を呼んで、暫くしたら玄関がさわがしくなって、司おじ様が現われた。
あいかわらず大きいなぁ……それに一緒にいるボディガードも怖い顔してる。その歩き方どうにかなんないの?だから彼女ができないんだよ?
 
 
「よぉ、楓維。元気だったか?」
「……こんにちは、司おじ様。ぼ…俺は見ての通り元気だけど」
 
「俺……?お前、いつから……」
「なにか悪い?自分だっていつもそう言ってるでしょ?」
 
 
あぶない、あぶない!
この人には「俺」、でいいんじゃない?
パパにもママにもグランマにも言えないんだから、司おじ様ぐらいならさ……それに「俺」の方がやっぱり「格好イイ」し?
 
くすっ……!
 
 
「相変わらず生意気なチビだな……!」
「悪いけどチビじゃないよ、キンダーガーデンじゃ1番背が高いよ」
 
「これでか?なんだ、3フィート(91.44㎝)ぐらいあんのか?」
「無駄に背が高いからわからないんだね。俺、もう少しで4フィート(121.92㎝)だから1つ上の子たちと変わんないんだ」
 
「……なんかムカつくな、お前」
「じゃあ会いたいなんて言わなきゃいいのに」
 
 
毎回会えばこんな感じ。
ムスッとして目だってつり上がるし、口だってすっごく尖るし。
それなのに僕の真後ろを歩いて「どこに行くんだ?」っていつも聞くんだ。
 
うっとおしいっ!You are bugging me!
 
そう言っても離れない、ほんっとーーーーーに、ウザい。
日本じゃ面倒臭い人の事をこう言うんだよ。ママはこんな言葉、使っちゃいけないって言うけど。
 
 
「勉強できてんのか?」
「……おじ様に言われたくないよ。イヤだけどやってるよ」
 
「スポーツすんのか」
「してるよ。昨日は乗馬だった」
 
「あ?あれもスポーツなのか?」
「騎乗の正確さを競う馬術競技って言うじゃん。ポロだって乗馬ホッケーでしょ?知らないの?」
 
「……やっぱ腹立つな、お前。特にその髪……」
「髪にまでケチつけるの?じゃあ話したいなんて言わなきゃいいのに」
 
 
もうずーーーっとこんな感じ!ホント、イヤになるのはこっちだよ。
 
でも、そんな司おじ様がバルコニーのベンチでスマホを眺めてたんだ。
どうしたのかな?って近付いたけど全然僕に気付いてない。
だから後ろからそれを覗き込んだら……おじ様とお友だちと……女の子の写真?
 
誰だろう?日本人?黒髪ですっごい顔して笑ってるけど……
可愛いと言えば可愛いけど……なんだろ?ママとはちょっと違う……
 
なんだかすごく…………ステキな笑顔かも…………///。
 
 
「うおっ!!なんだ、お前居たのかよ!」
「……それ、誰?」
 
「見たのか……くそっ、何でもねぇよ!」
「何でもないのにそんな赤い顔して見てたの?もしかして彼女?」
 
「……………………」
「じゃないんだ?フラれたの?」
 
「……………………」
「おじ様、こんな感じがタイプなの?意外だね」
 
「……………こいつは特別だったんだよ」
「特別?」
 
 
その時、おじ様がほんのちょっと赤くなって、ほんのちょっと笑ったんだ。
そんな顔初めて見たから驚いた……だって、すごく優しい目をしていたから。
 
 
「今はどうしてるの?その女の子」
「………………知らねぇ!」
 
「えっ?!どうして急に怒るの?もしかして恋人出来たの?この3人のだれか?」
「うるせぇよ!!ちっ……類のヤツ、今頃……」
 
「……(るい?そいつがこの中にいるのかな……)」
 
 
司おじ様はこの日の夜にNYに帰ったんだけど、僕の頭には黒い髪の女の子の顔と、「るい」って名前がインプットされた。
 
どうしてかな……歳だって随分はなれてるのに、ドキドキするんだよね。
キンダーガーデンにだって可愛い子はいるけど、そんなんじゃないんだ。会ってみたいな、って……お星さまを見ながら思ったりしたよ。
 
そんな時だったんだ、ママから日本行きの話が来たのは。
 
 
「えっ?……僕が日本に行くの?」
「えぇ、そうなの。ママの実家にいるタマさんって人が入院したからお見舞いにね。楓維が司に似てるって話してたからすごく会いたがってるのよ。とても大事な人なの、だから一緒に行きましょ?」
 
「うん、わかった!」
 
 
くすっ……TOKYOか……。
……会えたらいいな♪
 
 
 




このページの拍手数:1325 / 総拍手数:153210