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道明寺 楓維 五歳の春
écrit par Sorairo










ママが言う『楽しみ』とは少し違うワクワクがあった。
まさか、簡単に会えるとは思ってなかったけど、しかも あんなに人がごちゃごちゃしている場所で。
 
僕は司叔父様が言ってた『特別』と『類』に遭遇した。
 
一緒に過ごした二週間、その『特別』は写真で見る平たい笑顔よりうんと綺麗で暖かくて、叔父様が悔しそうにしてた『類』って奴は、
『特別』を守る様にいつも隣に居た。
 
 
僕が『こんなの…』と言ってしまった、
知らない人と銭湯ってやつに入る事も、たった数分のアトラクションに何十分も並ぶ事も、
自分の食べるモノを自分で作る事も、
……洗濯も掃除も全部全部『こんなの…』ではなくて、普通の事として存在する事を知った。
 
 
最後の夜、銭湯で「何があったの?」と訊いた時のアイツの顔は、
二週間一緒に過ごして初めて見る顔で、
アイツの答えに何も言い返す事が出来なかった。
 
………大きくなったらって…いつだろう…
 
 
都内の桜はいつの間にか咲いていてもうすぐ満開なのだろう。
僕が帰る日、二人は空港まで送ってくれて、ママとの待ち合わせの場所まで手を繋いて歩いてくれた。
 
 
「ママーーーーー」
「楓維っ!遅くなってごめんね…」
 
「ううん、つくしと類と楽しかった♪」
「……そう、良かったわね。つくしちゃん、類君もありがとう。沢山お世話になっちゃったわね」
 
ママに会えたのは嬉しかったけど、つくしとはここでバイバイなんだと思ったら、
今まで感じた事もない気持ちになった。
 
「ねぇ、つくし。今度は何時会える?僕の邸に遊びに来てよっ!ねっ!いつ来れる?ねぇ、ママ良いよね?」
「楓維、つくしちゃんは学校もあるし忙しいのよ?無理言っちゃダメ」
 
「……………会えないの?ダメなの?」
「……楓維くん、いつかまた会おうね?」
 
小指を出して約束の指切り、
「つくしぃーーーーー」と、その胸に飛び込もうとしたら、アイツに首根っこを掴まれ体が宙に浮きそうになった。
 
日本に来て二度目だった。
 
僕の首根っこ掴むのって、ママだけなんだぞっ!
 
どんだけなんだよっ!綺麗な顔して表情筋少ないクセに、つくしが絡むとヤル事がエグいんだよっ!
 
悔しいから、振り向いて「絶対 泣かせんなよっ!」って言ったら「心配すんな、早く帰れ」ってママに押し付けられた。
 
つくしには「仲良しさんねぇ♪」なんて言われたが、
 
 
断じてっ!違う!!
 
 
***
 
 
動き出した機内の小さな窓から、つくしの姿を探した。
大きく手を振るつくしの隣には、やっぱりアイツが居て、
きっと、これから先もずうっと隣に居るんだろうと思ったら、不思議と安心した。
 
 
「ねぇママ」
「ん?なに?」
 
「つくしって綺麗なんだ…」
「……そうね…」
 
ママは、少しだけ驚いた様な顔をして大好きな笑顔で一つ頷いてくれた。
 
「早く大きくなりたいなぁ~」
「そっか……頑張りなさい」
 
 
『うふふ…大きくなっても類には敵わないでしょうねぇ……』
 
ママが小さく呟いた言葉は聞こえない振りをして、小さな窓から手を振り続けた。
 
 
………早く、大きくなりたいなぁ~
 
 
大きくなって、アイツがつくしを泣かせてたらぶん殴ってやるんだ。
 
 
 
道明寺 楓維、五歳。
小さな体で大きな決意をした春だった。
 
 
 
 
おしまい





お付き合いありがとうございました
恒例のスピンオフは、明日0時より公開致します
こちらもどうぞ、お楽しみに……

 
 
 

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