プレゼント



「Happy Birthday、レイジ」

「……いま聞こえたのは、空耳だったのだろうか。メイの口から祝いの言葉が聞こえた気がしたのだが」
「ちゃんと言ったわよ! 頭だけじゃなく、耳まで悪くなったのかしら」
「ではナゼ、そんなにむくれているのだ」

 かわいい妹(のようなもの)は眉をゆがめ、口をへの字にしている。
 見慣れた表情だが、祝いの席だと言うのに、ましてや私に向かって「HappyBirthday」と言っている顔ではない。

「……またひとつ、レイジが歳を取るのね」
「当然だろう、誕生日だからな」
「8歳も離れてしまったわ。7歳差ってだけでもガマンがならないのに」

 どうやら不機嫌の原因はソコらしい。

「年齢などササイなことだろう」
「大きなモンダイよ! レイジは私より先に大きくなるし、私より先に結婚できる年齢になったし、
パパは先に検事にならせるつもりみたいでしょう。
どうせ、セックスだって先にすませたんだわ」
「ぶはっ!」

 先生がいなくて良かった、と心から思った。
 弟子の誕生を祝いにわざわざ帰ってくる人でも、そんなヒマな身でもない。

 気を取り直して、メイを見る。

「いまは8歳の差は大きく感じるかもしれない。しかし、いずれは気にならなくなるだろう。
キミがハタチになれば私は28だ。キミが30なら38、60なら68。ほんの少しの差、だ」
「……そんな歳まで、私とつきあうつもり?」
「キミが望まぬというなら別だが、私たちは家族だし兄弟弟子だ。
ともに検事になり法曹界に生きるというなら、狩魔豪の弟子という血よりも濃いつながりが
私たちを結び付けていることだろう」

 それはむしろ、私の望みだったのかもしれない。
 親を亡くし友と呼べる者もいない身で、唯一の身寄りはこの家だけだった。
 それもまもなく、ここを独り立ちしなければいけなくなる。

「……仕方がないわね。姉弟子として、見守っていてあげるわ」

 それはどんな贈り物よりも嬉しい言葉だった。

「ではとりあえず、このケーキをいただくのにつきあってもらえないだろうか」
「私がトクベツに作ったケーキよ。心して食べなさい」

 シェフやメイドがずいぶんと手出ししたらしいが、そのことは触れないでおく。

 私はカンペキなケーキにナイフを入れた。