【僕は拾われた】(猫ライ裏話 ライside)

気付くと僕は木の上にいた
何故ここにいるのか……

そうだ、僕は逃げてきたんだ

怖くて怖くて……

死んでしまうんじゃないかと、恐ろしくて

あそこから……



あれ?



あそこって…………どこだっけ?



それよりも、僕はだれ?



名前も、何も思い出せない



木の上で目覚めた僕は、空っぽだった








「みぃ……」

自分の存在が朧気である不安が、僕に声を上げさせた
人の言葉を話すことも可能だが、僕は「猫」だ
人外の動物が喋っているのを人間に聞かれたら、どんな目にあうか
想像するのは容易い
ここまできて、はっと我に返った

どうやら僕は、記憶が抜け落ちてはいるものの、常識は忘れていないらしい
それにしても、どうして僕は人の言葉を話すことが出来るのだろう
猫なのに……

新たな疑問に思考が沈みそうになったその時、僕が座っていた木の真下に誰かが走って来た
首を伸ばして下を覗くと、服装から男と思わしき人間が立っていた
その男の黒髪がしっとりと濡れていて、そういえば雨が降っているなと今更ながらに気付く

雨宿りでもするつもりなのだろう
この木は枝も多く葉も多い
雨宿りには最適だ
それを見抜いた上で雨宿りをしているのなら、大したものだと思う

少し興味が湧いて、その後30分
動かない男をこちらも動かずに観察してみた

そっと息を潜めて、頭の上に落ちてきた雨粒をふるふると首を振ることで払い落とす
冷たい雨粒が、払っても払っても落ちてくる
上を見上げると、雲がゆったりとしたスピードで流れていくのが見えた

……そろそろ止みそうだ

雨が止んだら、真下に居る男は帰ってしまうのだろう

気付いた事実に、なぜか胸が締め付けられるような錯覚を覚えた

……何だろう、この気持ちは




「二択だな」

「みゃぁ」

「……っ」




真下であたふたと周りを見回す男の異変で、自分が声を上げていたことに気付いた



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