「やァやァ鬼どもめ。これなるは桃太郎である!宝を寄越せ!」
「単刀直入だな。」
「迷いが無いな。」
「もう何でも良い・・・。」

桃太郎の直截的な名乗りに奥から鬼達が次々現れました。
そして、桃太郎の背後に居る犬-----------にさせられた元鬼を見て愕然としました。

「ちょ・・・お前何でそっちに居んの!?」
「今更何言っとるんだ貴様。」

目玉が飛び出さんばかりに驚かれた犬が平然と言い返すと、赤い瞳の鬼は慌てた様子で周囲の鬼を見まわしました。
しかし他の鬼達も首を傾げたり肩を竦めたりしています。

「アルティミシアから話が行っていないのか?」
「知らねえよそんなもん。」

どうやら伝達ミスがあった様です。
ですが犬にとっては最早知った事ではありませんでした。

「そう言う訳だから大人しく宝を出せ。」
「いや出せって言われてもよう・・・」
「下がれジェクト。こうなってはガブラスも敵だ。宝をやるわけには行かん。」

紅い瞳の鬼を制した別の鬼が桃太郎達の前に立ちはだかります。
頭にプロペラの様なものが生えていて、前掛けには何故か巻き寿司の様な模様が付いていますが鬼は鬼。油断は出来ません。

「おぉっと、コイツの相手はオレがするぜ!お前らは宝を探しな!」
「雉君!」
「頼んだバッツ!」

プロペラと巻き寿司モドキを纏った鬼の前に立ちはだかったのは雉でした。
その脇を桃太郎の手を引いた猿が擦り抜けました。

「易々と行けるとでも?」
「くそっ!」
「猿君!」

しかしここは鬼の本拠地です。
すぐに銀髪の鬼が行く手を阻みました。

鬼は長い刀を振り被りました。
猿は咄嗟に桃太郎を背後に庇いました。
しかし痛みも衝撃もありません。
恐る恐る目を開けた猿は目を瞠りました。

「ここは私が喰いとめる。お前達は早く奥へ-------------------」

刀を防いだのは犬でした。
大振りな二振りの剣を交差させて斬撃を受けた犬の眼前には刀が迫っていました。
際どい近さは一瞬でも気を抜けば額を割られてしまいます。

「犬君!」
「行け!」
「でも・・・でも・・・・・!」
「ここまで来て諦めると言うのか?」

食い下がった桃太郎に僅かに視線を向けた犬は、厳しい顔をしていました。
桃太郎は言葉に詰まりました。

「お前を拾い育ててくれた祖父母らに礼をしたいのだろう?」
「うん・・・。」
「ならばこの様な場所で足止めを食らっている場合では無かろう。」

素直に頷いた桃太郎に犬は優しく笑んで、行け、と短く言いました。
桃太郎は零れそうになった涙を袖で拭って、歯を食いしばって駆け出しました。
一緒に走る猿が襲いかかって来た鬼を追い払いました。
桃太郎は背後を振り返って、一人で何人もの鬼と対峙する雉や犬の姿を瞳に焼き付けて、奥へ向かって必死に走りました。

このページの拍手数:329 / 総拍手数:335

コメントを送る

※コメントに入力できる文字数は全角で最大1000文字です

※このコメントはサイト管理人のみ閲覧できます