黒羽編



俺の親父は弁護士だった。

弱者の味方だ、善意の番人だとマスコミはもてはやしたが、家の中では決していい父親ではなかった。

常に依頼者のことを考えていて、家のことを省みる人ではなかった。

そんな父親に疲れて、俺が小学校に上がった頃、母親は家を出て行った。

父親としてはダメだったが、弁護士としては尊敬していた。

「クロはさ、親父さんのあとをついで弁護士になるの?」

教室で昼飯を食べながら祐介が聞いてきた。

「たぶんな。祐介こそ親父さんの跡つぐのか?」

「うーん。医者にはなるけど、跡はなぁ・・・。親父は涼介に跡を継がせたがっているみたいだし。」

そういって祐介は玉子焼きを口に運んだ。

「え?弟の涼介にか?なんで??」

俺はペットボトルのお茶を噴出しそうになった。

「うーん。よくわかんないんだけど、じいちゃんがそういっているらしい。」

「おまえんちも大変なんだな。」

「おまえんちほどじゃねぇよ。父一人子一人じゃねぇか。」



そんな話をしていた夜。親父が刺されて亡くなったという連絡がきた。

うそだろ?

茫然自失となる俺を隣に住んでいる親父の友達のおじさんが病院につれていってくれる。


病院の地下。冷たい部屋に通された。

部屋に入ると線香の香りが俺の鼻をつく。

なにもない殺風景な部屋に、白い布がかかっているモノがある。

その一部をもちあげると、そこには満足気に微笑んでいるかのような親父の顔があった。

んだよ、それ。

なにやってんだよ。はやく起きろよ。

おまえこれ以上家をあける気か?これ以上家に帰らない気か?!

はやく、起きやがれ。

起きろよっ。

起きて・・・くれよっ。




高校3年の夏、俺は天涯孤独になった。




(おまけページなのに、つづく(笑)。この後の展開のネタベレになってしまうので・・・。タイミング的に数話後になると思います。すみません)
 


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